部屋のベッドに寝転がる。
どっどっと心臓の音が煩くてワイシャツを握りしめた。先ほど見た光景をもう1度整理する為に目を閉じる。
真緒くんが知らない女の子と歩いてた。私の知らない顔した真緒くんが知らない女の子と2人きりで歩いてた。多分だけど最近転校してきたっていう女の子だと思う。ただそれだけなのに心臓が絞り上げられたんじゃないかってくらい痛くてぽろぽろ涙が出て苦しくて誤魔化すように鼻を啜った。
私の幼なじみの衣更真緒くん。優しくてかっこよくて大好きな幼なじみ。ずっと気持ちを押さえ込んできたバツなのか恐れていた事が起こってしまったようだ。

「名前〜、聞いてよ今日さあ、」

ノックもせず入り込んできたもう1人の幼なじみの凛月くん。私は情けない顔を見られたくなくて枕に顔を押し付けるようにして寝た振りを決め込んだ。凛月くんの視線を感じる。
暫くの沈黙の後 ぎしり、とベッドが軋んで凛月くんの重みも加わったんだと理解した。凛月くんは私の髪を手に取るとあそび始めたようでややこそばゆい。

「名前 、寝てるの?」

凛月くんの声は優しい。私は返事もせず自分の世界に閉じこもっている。凛月くんは私が寝てると勘違いしたまま私の頭をするりと撫でて中途半端に伸びた髪を真ん中に分けた。首元がスースーして嫌な予感に眉を顰める。

「可愛い、名前、大好き。」

ちゅ、と首筋に凛月くんの唇が触れ思わず声が漏れそうになるが咄嗟に我慢をする。時折ざらついた凛月くんの舌が私の首を掠めて遊んでいるようだ。かかる息が暖かい。

「ま〜くんやめてさ、俺にしてよ。」

その瞬間一つの可能性に頭が真っ白になっていく。凛月くんはもしかして私のことが好きなのだろうか?ぼんやり考えているとちゅう、と強く吸われた。きっと赤く跡になっているに違いない。

「好きだよ、名前 。」

凛月くんの声がしん、とした部屋に重く響いた。ああ、私が凛月君のことが好きだったらよかったのにね。