最近、私のアルバイト先であるコンビニに高校生の男の子がよく来店してくれる。多分近くのアイドル科とか訳わかんない学科のある学校の子……、だと思う。制服的になので確証は無いけど。
めちゃくちゃ金髪なので目立つ。とにかく目立つ。メガネを取ったらかなりの美少年なんだろうと伺える大きな目やら白い肌やらなんかもう色々負けている事を痛感させられる人物だ。多分恐らくあの子はアイドル科の方かな。

「これ、ください。」

スポーツ飲料と軽食を私の目の前に出すと慌てて財布を取り出し、そして……小銭をばらまいた。なんと、ドジッ子かとアイドル要素に感心するもそれどころじゃないと身を乗り出して大丈夫ですか?と声をかける。

「あっ、だ、大丈夫です!」

ぱっと恥ずかしそうに顔を上げる少年と目が合うとぶわわ、と頬を染められてしまった。更に慌てふためいた少年は勢いよく立ち上がったのだ。

「えっ、ちょ、まっ」

ごちん!と彼の頭と私の額が派手な音を立ててぶつかりあまりの痛みに私は声を失った。

「ああああ、だ、大丈夫ですか!ごめんなさい…!!」

「あ、大丈夫、です。気にしないでください。それよりお客様にお怪我はありませんでしたか…?」

未だにじんじんと熱を持つおでこに軽く触れながら片手で彼を制して怪我の有無を聞くとハッとしたように大丈夫です!と答えてくれた。良かった。未来のアイドルに怪我を負わせただなんて考えただけで恐ろしい。

「や、優しいんですね、」

もじ、と指を持て余すように動かしながら私にそういう少年にきょとんとしてしまった。いきなりだなあ、と笑っておでこを摩る。

「そうでもないですよ。」

そう伝えると会計を始めた。ぴっ、ぴっとレジを打って袋詰めしている間ずっと熱を帯びた視線を感じるような気がするが目を合わせてはいけない気がする。お会計を済ませるために金額を伝えるとはっとしたようにお財布から1000円を出されたので私はお釣りと袋を少年に渡す。少しだけ触れた手にわかり易く反応をされてこちらがドキマギしてしまう。初だなあ。

「いつもありがとうございます。またのご来店お待ちしております。」

テンプレのセリフを吐けば花が飛びそうなぐらい喜んでくれた。

「僕、遊木真って言います。また来ますね、……名字さん!」

なんで名前、とは思ったけれどそりゃ私は名札を付けているからねと心を落ち着かせ、営業スマイルを一つ。浮かれたような足取りで退店していく遊木真くんを見送ればため息をついた。いやはや、若すぎる反応だ。


後日、遊木真くんのお兄ちゃんと名乗るモデルのような男の子が「うちのゆうくんを誑かさないでくれる!?」店に文句を言いに来て地獄のような思いした話はまたの機会に。