冬の朝の陽の光が好きだ。オレンジの少しセピアがかかったような暖かい色。刺すような空気の中で陽の当たる場所には暖かみがあるように見えるのだ。実際陽の当たる場所に立ってみても空気は寒いままだが。
「おはよう、朱桜くん。」
「お姉様!おはようございます。今日も寒いですね。」
朱桜くんが喋るたびにふわふわと白い息が出るのを見てやはり冬はいいなあ、と頷いた。お鼻が赤くなっている朱桜くんに微笑ましさを感じながら校門を潜る。
「もうすぐ冬休みだね。朱桜くんはどこか旅行行くの?ハワイとか?」
「いえ、今年はKnightsの先輩方と新年の約束をしてますので。」
へえ、仲いいんだね、と返すと朱桜くんに予定を聞かれる。特に何も予定のない私は首を傾ける。
「それが予定はさっぱりないんだよね。旅行もうちは両親忙しいしさ。」
「そうなんですね。」
「こたつみかんで新年を迎えると思う。」
こたつみかん、と朱桜くんは呟いた。お、もしやこの庶民の楽しみを知らないのだろうか。私はわざと大袈裟に嘆く。
「ええ!?まさかこたつみかんをご存知ない!?ああ、朱桜くん、それはとても勿体ない…!冬を楽しむ上でこたつみかんを知らないなんて…!!」
「そ、それほどまでとは…!」
はあ、と重苦しいため息を着くと 瀬名先輩に教えてもらいなね、と笑いかける。確かKnightsのお部屋になんかこたつあった気がする。上手く行けば私もお零れにあずかれるかもしれないと卑しいことを思うと朱桜くん頼んだよ、という意を込めて肩を叩いた。
朱桜くんの赤い綺麗な髪が陽の光にきらきらと反射して冬の景色によく映えている。校舎に目を向けると冷たい空気のせいかやけにクリアに見えて、ああ綺麗だなとぼんやりと考える。
「いつもと同じ風景なのに冬になるとそこらかしこが綺麗に見えるよね。」
そう声をかけると少し先を歩いていた朱桜くんは肩越しにこちらを見た。それだけなのに朱桜くんてば絵になるなあ。寒さで赤くなった頬をにこりと緩めると彼はゆっくり口を開く。
「ええ、私もそう思いますよ。私とお姉様は同じことを考えていたんですね。」
ふわりと風が私の思考を奪っていった。