「さ、寒い!!」

「そりゃそんなスカート短ければ寒いだろうなあ。」

玄関を出てから一言そう漏らすと丁度向かいから出てきた真緒くんにそう言われる。

「見ないでよえっち。」

「は、はあ?寒いって言ってたのそっちだろうが…!」

真緒くんにじとりと視線を向けると脚を隠すようにしてカバンを持ち直す。そのまま駅の方向に向かおうとすると自然と真緒くんと一緒になってしまう。

「……あー、あのさあ。最近学校どう?」

別々の学校に通う私達はお互いの近況を知らない。凛月くんは真緒くんと一緒だからある程度知ってるみたいだけど私は2人の事を全く分からなくなってしまったのだ。たまに凛月くんから真緒くんのこれが可愛かったなどという定期連絡はくるけど頻繁にではないから実質よく分かっていない。

「別に。特に何も…。」

「ふぅん、部活なんだっけ…?」

なんとも娘と父の会話みたいな流れである。最近の真緒くんは私と話しづらそうで昔みたいに楽しい会話が出来なくなってしまった。まあ、疎遠になれば今までの感覚とは違うだろう。

「前にも言ったじゃん。吹奏楽部だってば。」

「あ、そうだったな…!ごめんな…?」

上目で謝る真緒くんを見て小さく胸をきゅんとさせる。かわいいおでこくんめ。いけないいけないと頭を振ると真緒くんの背中を押す。落ち着け私…!

「凛月くんのお迎え行くんでしょ。早くしないと遅刻するんじゃない。」

「え、あ、そうだけど…。なんで知ってんの?俺言ったっけ…?」

「凛月くんから聞いてるもん。」

「凛月とは連絡とってんの…?」

私は軽く頷くとほらほらと背中を更に押す。

「わ、自分で歩けるっつーの!」

「はいはい、じゃあ私はこっちだからじゃあね。」

真緒くんに背を向けると再び駅に向かって歩を進める。後ろから引っ張られ驚いて尻餅をつくと私はぎゃあと叫び声をあげた。真緒くんめ…!と見上げると困ったように眉を下げた顔と視線があって一瞬怯む。

「……一応聞くけどなんか用?」

「……す、スカート短くするならタイツとか履いといた方がいいと思う。」

私はきょとんとした後でため息をつく。真緒くんは過保護だなあ。はいはいと適当に返事すると真緒くんは慌てて怒り始めた。
はいはい可愛い可愛い。