「おめでとうございます。」

「はい、どーも。」

後ろから声をかけると気だるげにこちらを振り返り瀬名先輩は少しだけ考えるように斜め上に視線を投げたあとすぐに返事をくれた。

「プレゼント、沢山ですね。すごい。」

「まあね。ほんとこんなに持って帰れないんだけどぉ。」

ぶつぶつとプレゼントを積み直しながら瀬名先輩は で?と言いたげに私をみた。たぶんプレゼントの催促だろう。実際プレゼントは用意している。ただ皆からのプレゼントを幸せそうに見ているそれを前にして何となく渡しづらかった。

「いえ、あの。お祝いのメッセージだけ伝えに来たと言いますか。」

ポケットのものを軽く抑えると少しだけ後ろに下がった。では、と踵を返す。

「待った。」

「ぐえ」

ブレザーの首元を引っ張られ喉が絞まる。後ろの先輩が慌てたように私から手を離して謝った。

「……、違ったらあれだけど、ポケットから包装されてる何かが見えてんの。俺のじゃないわけ?朔間の?」

「え、いや、」

朔間先輩にはもう渡した。これは瀬名先輩のである。みんなのプレゼントを見てしまったら自分の用意したものが陳腐なものに見えてしまう魔法にかかってしまった私はどう答えようかと考えてるうちに言葉が出なくなってきてしまう。なんて言えばいいんだろう。

「……、」

先輩は私のポケットからそれを奪い取る。万年筆だった。すごく綺麗な色の物があって先輩の目の色に似てる素敵なペンで、どうしてもプレゼントしたくて買ったものだった。それが先輩の手に渡ってるのを見て自然と最初の言葉と同じことを言ってしまう。

「……お、おめでとうございます。」

「はい、どうも。」

冒頭と同じやりとりをした後にぽんぽんと頭を数回撫でられる。

「ありがとね。」

上から降ってきた声は私の胸の中にじんわりと広がった。