「うっちゅ〜☆」

独特な挨拶が聞こえたかと思えばどんっという衝撃。そのまま地面に転がり込んだ私の上に乗っかる何か。言わずもがな月永先輩だ。

「あほじゃないですか!?めっちゃくちゃ痛いんですけど!!!」

届く範囲で手を振り回して月永先輩を攻撃する。

「わはは!なんだ、新しいダンスか!?待って!言わないで!考えさせて!」

新しいダンス!?どれをどうみたらその発想になるのかとめげずに攻撃を続ける間に瀬名先輩が通りかかったのが見えた。救世主!この人をなんとかしてくれるのはもう先輩しかいません!とばかりに声をかけた。

「先輩〜!!ここです!助けてくださ〜い!!」

「……アンタ達なにやってんの?」

心底呆れた声に一緒にしないでください…、とつぶやくと、地面から先輩を眺める。

「瀬名先輩、足長いですね。」

背中で紙をばさばさ広げられる感覚に目眩を覚えながらそう伝えると当然でしょ、とばかりに腕を組まれ見下ろされた。

「一生のお願いかもしれない事をいうとこの上の人をなんとかして頂きたいんです。なんか多分曲書き始めてません?」

「王様、ほら、なにやってんの。騎士道掲げたユニットのリーダーが女の子の上に乗っかんないでよ。」

「お、セナ!見ろ!こいつの背中から名曲が生まれるぞ!」

「きぃー!重い!重い!!」

瀬名先輩はもう、と月永先輩を引きずり下ろし私を立たせた。膝を払ってくれたり私の身支度を整えている様を見てお母さん、と呟くと膝をぶっ叩かれた。

「お兄ちゃんって呼んでもいいよぉ。」

「あはは、」

「お!オレの事もお兄ちゃんって呼んでもいいぞ!まあ、一番の妹はルカたんだけだけどな!」

「月永先輩みたいなお兄ちゃん怖くて要りません。」

先輩はもう聞いていなくてインスピレーション!と叫ぶと庭園の方へかけて行った。災難である。去っていった嵐にほっと息をつくと瀬名先輩に頭をさげる。

「助かりました。」

「あいつさ、わかってると思うけどアンタの事大好きみたいだからあんま嫌ってやんないでね。」

優しそうな顔をする瀬名先輩は本当にお兄ちゃんみたいだったのは私だけの秘密である。