「 すきだ 」
右隣から聞こえた一言に机に向かって日誌を書き込んでいたわたしは一瞬固まる。
好き?好きって聞こえた?じ、と文字と睨めっこをしながら数秒前のフレーズを繰り返すが分からなかった。ゆっくり右隣を見ると衣更くんがこちらを見ていた。
「 ……? 」
私の表情を見ると衣更くんはくしゃりと嬉しそうに笑って
「 やっとこっちみた 」
なんて言うもんだから状況を理解した。からかわれたんだ!衣更くんに恋心を抱いていた私はがん、と鈍器で頭を殴られたような気持ちになった。心がずきりと重い。
「 もう、衣更くんからかわないでよ。 」
やっと笑って見せるが心の中は笑ってる場合では無かった。なんだ、衣更くんの私に対する好きって冗談になっちゃうくらい軽いもんなんだな、とぼんやり頭の隅で思っていると衣更君は頬を染める。
「 あ、いや、ええと、 」
衣更くんは頭をかくと視線を下に向けてしまう。
「 お前の事が好きだ 」
もう1度呟かれた言葉はストンと心の真ん中に落ちて私は息を飲んだ。これは夢だろうか。
「 」
言葉にならない私の返事は不意の涙に呑まれて消えてしまうのだった。