ーピピーッ
「集合ー!」
「三年が引退した分の戦力、今日からこつこつ取り返していきましょう。新キャプテンの殿村です」
あの試合から数日、新しいキャプテンに殿村先輩が抜擢され、なんだか新しい風が吹きそうな予感。
他の部員はと言うと先日の由希先輩の「尻引っ叩くよ」が忘れられないらしくより一層気合いを入れてくれている。
「町田マネから何かある?」
「いえ特に殿村くんと同じです」
「宝生さんは?喋りたそうだけど」
『…胸が高鳴りますね、皆さんもですか?私は早くバスケがしたくて堪りませんっ皆さんもです?』
全く一喝もない腑抜けた挨拶に部員一同一瞬がくっとなっていたけどすぐに笑って和ませてくれてありがとー!と言い練習が始まった。
「なーあんたさ」
『前から思ってたけどあんた、じゃないよ、宝生歩。名前があるから名前で呼んでほしいなぁ成瀬くん』
「次いつバスケすんの?歩」
『この前試合でやり過ぎちゃったからしばらく自重かなぁ…』
「ふーん」
また成瀬くんはそれだけ言うと消えてしまった。
「おーっす!」
放課後練習時、引退した三年生たちが遊びに来てくれた。
『わぁ〜先輩たち遊びにきてくれたんですね、暇なんですか?』
「宝生さん天然なの?それ。暇じゃないよ受験生だよ受験勉強の息抜きくらいさせろこらーっ」
『きゃーっ由希先輩木戸先輩にやられるぅ』
数日振りに見る先輩たちのジャージ姿にテンションが上がり、同様先輩たちもテンションが上がり木戸先輩に肩を組まれて頭をぐりぐりされ、由希先輩に助けを求める。
と、なんだか一瞬、少しだけ。切なそうな顔をしたような気がした。
けどすぐにいつもの由希先輩に戻って冷静にやめなさいと叱られた。
「3on3?今からですか?」
「うん、一回だけやろうよ二年生対三年生で」
「じゃあ二年生から誰か三人…」
「はい、俺やる。あとこいつも」
『ぐえっ、え?私?』
成瀬が強引さを突き通し結局一年生(殿村)チーム対三年生チームのゲームが始まった。
「歩」
『はいよっ…と!』
ーすぽっ
『成瀬くん』
「おう」
ースパッ
「…なんかあの二人めちゃくちゃ気が合ってねぇか」
「タイミングがバッチリだな」
「お互い名前しか呼び合ってねぇのに全てが通じてる感じが…すげぇ」
そして一瞬のうちにゲームは終わり、見事三年生チームに勝ってしまった。
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