「宝生(ほうしょう)さんね、君も大変だね〜〜こんな中途半端な時期に転校って」
『ねー!あと一学期早かったら入学式から来れたのにっパパとママに言っときます!』
宝生歩 高校一年生
好きなもの、バスケ。
『えぇ〜〜!!ここ女バスないの!?』
部活一覧表を見て一人思わず嘆いてしまった。
でもそれくらいショック…。
それでも諦めきれない私は、
『初めまして、1-Cの宝生歩です、バスケ部マネージャー希望で入部します!』
こんな形でもバスケと繋がっていたいんだ。
『あの成瀬…って子一年生だよね…』
『すごい…早い…』
『……ワクワクするね!』
「ひとりごとだと思ってたけどすごい変化球で話しかけてくるんだね、それと私一応先輩だからね、敬語使おうか、君も、成瀬も」
一年生、成瀬翔。
マネージャーになって彼のバスケを見る日々、楽しくて楽しくて体がうずうずしてきてつい隣にいる一年先輩の町田由希先輩の手を握ってキラキラした目をしていた。
『あっ由希先輩ごめんなさーい(てへっ)でもでも、成瀬君のバスケ、ほんっとーに楽しいんです!』
「楽しいって…見てるだけでしょ」
『…由希ちゃん、このバスケの楽しさが分かんないの?』
この楽しさが分かんないなんて、罪レベルで可哀想。
そう思うと涙が出てきてうるうるした目で由希先輩手を握りながら見つめた。
「いやだから先輩だから…私はバスケのことをなにも知らないから…」
『……っよし!じゃー私が教えてあげる!ピィーー!休憩ー!』
「っえ?休憩はまだ…っ?」
勝手にホイッスルを借りて休憩の笛を吹く。
部員たちがコートから出て各自休憩を取る。
『キャプテンっ私もバスケしたいです!』
「おぉーいいぞ!マネージャーも見てるだけじゃつまんねーもんなー!」
キャプテンの木戸先輩はすごく気さくな人で、私がそう言うと1on1に付き合ってくれた。
「女の子だし、ボールは先にどうぞ」
『わぁい、ありがとーキャプテン!初めてもいいですかっ?』
「どこからでもどうぞっ」
「っあ、そういえばハンデは…っ?!」
木戸先輩の声を待たずに駆け出す。
後ろから木戸先輩が追いかける。
体育館に私がつくボールの音だけがこだまする。
「宝生さんすげー…」
「バスケ出来たんだな」
他の部員も私とキャプテンに食い入るように見てる。
もちろん由希先輩もヒヤヒヤした顔で(オーラで)私たちを見てるので目でにこりと合図した。
「宝生さんよそ見するほど俺バカにされてるのかな?」
『っあ、キャプテンはや!』
「貰った…っ?!え!?」
『ふふん♪キャプテン女を見くびっちゃダメです…よっと!』
奪われそうになったボールを抱え込むようにして背中を回してがら空きだった外側から抜いてあっという間に3Pシュート。
『…わぁーお、決まっちゃった』
『きゃー!先輩、3P決まっちゃったよー!』
あまりの嬉しさに対戦相手の木戸キャプテンに抱きついてしまう、だってそれほど嬉しいんだもん!
なにより、
『気持ちいいー!やっぱバスケ楽しいー!!』
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