「朝倉りずって言います、よろしくお願いします」

「七海颯太15歳、彼氏いない歴15年でーす」

『…七海歩…もう帰りたい』


これがどういうことかと申しますと昨日に遡ります。


昨夜、りずの部屋のハンドクリームを借りに行って帰ってきた颯太。





『おかえりー何しに行ってたの?』

「ハンドクリーム借りに。あと偵察」

『ハンドクリームくらい貸すのに。偵察ってなに。また良からぬことを企んでんじゃ…』

「そのまさかだよ」


キラキラ〜〜と星が見えそうなくらいの笑顔を見せる颯太だが、逆に怖い。
なに考えてるのこの子。





「歩、りずがまた変なこと企んでる」

『それは間違いなくあんたでしょう』

「明日行くよ」

『どこに』

「合コン」

『…は?』

「歩はそのまんま女の子として参加な、とびきりおしゃれして行けよ」

『誰も行くって言ってない…』

聞く耳を持ってらっしゃらない颯太さんは言いたいことだけを言うと早々と自室へ戻っていき残された私は唖然。


そして今朝。

当然行くつもりも無かった私は優雅に睡眠を…





ーどかっ

「おい、寝坊すんぞ」

取れませんでした。


という経緯でして、服から化粧まで全て颯太が仕上げた。
前から思ってたけどこの子一体何者なんだ。




「オバさんになっても少女の様に愛してね」

「「ななみちゃ〜〜ん」」


カラオケに着き、爆走状態で男どもをトリコにしている颯太と放心状態の女子メンバー。





『(こそっ)マキちゃん、さやかちゃんごめんね突然』

「っえ!あーうん、急でびっくりしたけど…」

「まさか歩くんが女だなんて……似合いすぎてなんも言えねーーー!!可愛いーーー!!」


マキちゃんとさやかちゃんにがっつかれて終わったような合コンはりずには谷くんと言う収穫があったみたいで私も颯太もそこまで怒られずに済んだ。



が…




「…ムカつく」

『…』

「歩があの谷ってやつの気を引かねーから」

『……』

「…よし、行くか」

『っえ、ちょっ…どこにっ』

ぐいっと腕を引かれるがまま連れていかれたのはどこかのバス停。の近くで一人待機させられてる。


少しすると谷くんが颯太が一人で待つバス停に来て、倒れた颯太を運んで学校に連れて行きしばらくの沈黙タイム。


また少しすると谷くんが一人でバス停に帰ってきた。
ここで私の出番が来た様ですね。






『…イケないことでもした顔をしてる』

「っんえ!?!」

『ふふっ当たりだ。ねぇ、どんなこと…?』

ぐいっと谷くんのワイシャツの襟を引っ張ってみる。





「え…っと、その…っ」

『お姉さんにもそのイケないこと…お・し・え・て』

「っ!!…し、知らない人にはついてっちゃダメなんで…っ!!失礼します!!」


あまりの恥ずかしさに顔を真っ赤にして走り去る谷くん。
私はここ最近のことで恥ずかしい言葉を言うことにももう慣れてきた。





『バス…乗らなくて良かったのかな』


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