中途半端。
何をやっても中途半端。
俺はなにをやっても中途半端。
だけど
……。
「半田くん、おはよう。」
「あ、ぁあ、うん、おはよう。」
名無しに突然声をかけられてびっくりする半田。
そう何故こんなにびっくりするのかって名無しに"恋"をしているからだ。
ぎこちない半田の挨拶にボソッと「変なの」と一言呟く名無しに焦りを隠すかの様に変な笑いを浮かべる半田に更に疑惑の眼差しをする名無し。
あ、やばい、やらかした、
それが頭を過る。
そりゃそうだ、憧れの女子から挨拶をされたのだ。
幸せな上に至福この上ない。
それなのに嬉しさの反面驚きがもれなくオマケでついて来た。
自分の印象が下がったらどうしよう。
キャラが変わったらどうしよう。
そんな事ばかり無駄に考えてしまった。
「ねぇ…大丈夫?具合悪いの?
なんか顔色良くないよ?」
「ぇ…?ぁ、いや別に具合が悪い、とかじゃないんだ…ははは…」
乾いたような笑をする半田に勿論名無しは変な人だと思ったに違いない。
そして再び名無しから「変なの」と呟かれ肩を落とす半田。
ー嗚呼、名無しの中で今絶対変なキャラの人間って思われてる。
そう気を落とした半田に名無しはそっと口を開く。
「でも半田くんのそういうところ嫌いじゃないよ。
面白いし話し、やすくて、…好きだよ?」
少し悪戯っぽく微笑みながら言う名無しに顔をじんわり赤くする半田。
"好きだよ"と言われたのはいいが
人として好きなのか、
友達として好きなのか
それとも
自分と同じように
ー異性として好きなのか。
それは名無し自身しかわからないことだ。
しかしそれを名無しに問出せる勇気がない。
聞いてもし異性として好きだと言うならば恋は実った事になるが、名無しの口調と仕草的に恋愛対象としての"好き"はありえないと薄々半は感じていた。
希望なんて全くないのに何故か淡い期待をかけてしまう自分が何故かそこにいるのだ。
それぐらいに名無しの言った"好き"という言葉が半田に重くのしかかる。
「そ、そっか…。
そ、その…あ、ありがとう。」
「…うん」
静かに顔を背け背中を見せる名無し。
その顔をよく見ると仄かに頬が淡い赤色に染まっている。
名無しの様子を見るなり何かを察したかのように、それに釣られて更に顔を赤くする半田。
「な、なんで名無しが赤くなってんだよ…。」
「べ、別になんでもないよ…。
と、と、と、というかさっきの忘れて…!!」
「馬鹿…。あんなこと言われて忘れられる奴がどこにいるんだよ…。
その…。俺も名無しのこと好きなんだ…。
ったくお前と毎日挨拶するのすら恥ずかしいくらいは好きなんだからな」
自分が想いを寄せる女子にあんな顔で"好き"と言われて忘れられる様な男がどこにいるのだろうか。
そんな簡単に忘れられる訳がない。
「とりあえず改めて言うけど…俺は名無しが好き。
だからその…よろしくお願いします。」
「こちらこそ…よろしくお願いします。」
恥ずかしそうに少し俯く半田の手を優しく握る名無し。
半田はその手をそっと優しく握り返した。
じんわりと温度が伝わってくる。
その肌のぬくもりに改めて幸せを噛み締めたような顔をする名無しに微笑ましくも愛おしそうに見つめる。
「俺がお前をちゃんと守るからな」
そう自分に言い聞かせるように呟く半田に名無しは嬉しそうにそっと頷いた。
中途半端。
何をやっても中途半端。
俺はなにをやっても中途半端。
だけど…
俺は君を守ることだけは絶対に誓う。
そして君を幸せにしてみるよ。
,