君は僕のおひさま。
温かいおひさま。
サッカーを見ているときも楽しいけど君の笑顔を見ているときが僕にとっては一番の幸せなのかもしれない。
そんな名無しが今日も僕の病室にお見舞いに来てくれた。
この時間が一番僕にとっては幸せで…。
少ない時間しか会えないけれど会えないよりは全然いい。
だから少しでも名無しと話せるこの時間が僕にとってすごい幸せなんだ。
「今日も元気そうで何より」とそっと微笑む名無し。
僕も思わずその笑顔に釣られて微笑んだ。
「ねぇ。名無し」
「何?どうしたの?」
「僕さ、友達ができたんだ。
松風天馬くんっていう新しい友達ができたんだ。
天馬くんも僕と一緒でサッカーが好きでね。」
「ふふ、太陽くんなんだか楽しそう。
でもよかったね。新しいお友達ができて…。
私女の子だし、太陽くんみたいにサッカーのこと詳しくないし…私だけじゃやっぱ面白くないでしょ?」
「ははは、言われてみれば否定はしないけど…、でも名無しがこうやってお見舞いに来てくれるのが僕は凄く嬉しいよ?
病院にいるの毎日退屈だけどお見舞いに来てくれて色んな事を聴いたり、話してくれたりするのがやっぱり楽しいよ。
友達ができた、って事も誰読も先に君へ報告しようと思ったしね」
「それはありがとう。」
僕は嬉しそうに笑う名無しの笑顔が大好きなんだ。
見てると心が温かい気持ちになる。そんな笑顔が好きでいつも喜んでくれそうな話を探すんだ。
でも
僕はこの病気がどのくらい重いのかという話ができずにいた。
だってそんなことを名無しに話したら悲しむかもしれない…。
せっかく楽しそうに笑ってくれるあの温かい笑顔が消えてしまうとか考えたら中々切り出せずにいつも終わってしまう。
本当は言わなくてはならないことなのに…一番知ってほしい君に言わなくてはならないのに。
─天馬にも嘘を付いたときと同じように大したことないよ、って。
僕は君を喜ばせるつもりなのに傷つけてるかもしれない。
「太陽くん、どうしたの?
元気無さそうだけど…。体調悪い?看護師さん呼んでこようか?」
「ううん、なんでもないよ。ちょっと考え事してた。」
隠すかのようにそっと目を閉じる。
名無しが少し悲しそうな声で重たい口を開いた。
「ねぇ太陽くん。病気ってどれぐらい重たいの…?」
「大したことないよ。
僕は大丈夫だよ、すぐに退院できるから」
「ねぇ、なんで私に隠すの?私この間お医者さんの話聞いちゃったんだ…。
本当は重たい病気なんだって…もうサッカーできないかもしれないって…。
私ね、太陽くんには笑っていて欲しいの。だからずっとこのこと聞けなくて苦しかった…。
ごめん…。一番苦しいのは太陽くんだよね。私看護師の冬花さんから聞いたんだ。
私を悲しませたくないから病気のことも隠したい、って…。
ごめんね、私が太陽くんを…悲しませてる」
泣きそうになりながら自分の本心を打ち明ける名無しを見て僕は情けなくなった。
隠してることが悲しませてるんだっていうのはわかったけど、僕を悲しませないようにとする名無しを見て僕はなんてことをしてしまったんだ、と。
でも一番苦しいのは僕じゃない。
僕の状態を知っておきながら僕が自分のことを隠して空元気をしようとするところに、中々聞き出せなかった名無しも同じく苦しいだろうに...。
「ごめん。本当は一番先に君に言わなくちゃって思ってた。
でもいつも笑ってくれるその笑顔を壊したくなくて中々言えなかった。
ごめんね。君も苦しかったよね…。僕も言えなくて苦しかったんだ。
本当は大したことで済まされるほど軽い病じゃないんだ。
もしかしたら明日死んでしまうかもしれない、って…。」
「太陽くん…。」
「でも、僕は生きなきゃならないんだって。
サッカーもそうだけど君の笑顔も守りたいんだ。
だから僕はまだ…死ねない。」
真っ直ぐ名無しの目を見てそのことを伝えると先程まで悲しそうにしていた名無しの顔が晴れたように明るい眼差しを取り戻した
僕も思わずその顔に安堵の笑みが溢れる。
─僕は君に出会えてよかった、と。
これからも、この先も、君の笑顔を守るために強く生きよう。
─そしていつか君と太陽の下で笑い合える様に
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