放課後の陽花戸中。一人の少女が校門の外から練習を見に来ている。
その少女は校門の外から休憩中の立向居に声をかけた。








































「立向居くん〜!」































「あ。名無しさん!」









































声をかけられや否や先輩方に少しその場を外すと頭を下げ校門の方へ走っていく立向居。
練習して休憩入ったばかりでまだ休めていないところを走ってきたのか少し息切れをしている。
そんな立向居を見るや否や名無しは少し苦笑いをした。





































「もう、そんなに焦らなくてもいいのに…。」




































「急がずには居られません!
俺…名無しさんが俺の練習見に来てくれてたのが嬉しくて思わず走らずにはいられませんでした…!」































「ありがとう、そう言ってくれると嬉しいな」





































名無しと立向居はお互いに昔から近所で仲良くしており言わば幼馴染のようなものだ。
名無しは中学三年生と二つ年上の先輩で立向居は姉のように優しくしてくれる名無しに憧れを抱いていた。
その憧れている先輩が自分の練習を見に来てくれているというのだから嬉しくてたまらないのだ。



そんな名無しも受験で忙しいのか最近は中々立向居の練習姿を見てやれずに少し心配に
なっていた。




練習で無理をしすぎていないか、先輩方と仲良くやれているか。

自分の大切な後輩が無理をしていないかが凄く心配になっていたのだ。






































「ごめんね、最近全然練習見に来れなくて…。
受験勉強ばっかりで全然様子見に来てあげらてないから心配だったの。
だから今日こそは、って…。」








































「いいんです、先輩は今大切な時期でもあり忙しそうなのは俺もわかってますから。
だから謝らないでください。
確かに練習見てもらえる機会も最近減ってきててなんだか淋しかったのは否定しません。
でもいいんです、今日こうして見に来てもらえただけでも俺は嬉しいので」







































「そっか、それなら良かった。」























































期待してたより良い回答に思わず表情が緩む名無し。
しかし思ったより楽しそうな立向居に安心したのかほっと胸を撫で下ろした。
名無し自身の中では不安まみれでいっぱいだったのだから余計である。



























































「でも立向居くんが部活楽しそうで良かったよ。
嫌だな〜とかつまらないかもとか言う報告されたらどうしようかと思ったけど何事もなくて安心した」


























「大丈夫ですよ!名無しさんが思っているよりは俺は楽しくやってるつもりですし、それに俺は決めたんです。…貴方がもし頑張ることに疲れたら俺も頑張ってるからっていうのを貴方に見せるって」







































俺も頑張ろうって。
先輩が頑張ってるから俺も頑張らなくちゃって…。

形は違くともお互いに頑張ることには変わらないのだ。
立向居は頑張ってくださいって口だけで伝えるよりもこうやって自分も頑張ったら伝わるかもしれない、と思ったのだ

だから自分が一番頑張ることのでき、伝えられることで元気付けて励まそう、そう思ったのだ。

立向居の優しく強い眼差しに少し寂しそうに目を閉じる名無し。



こんなに後輩が自分の為を思っていてくれているのに自分はなんて情けないのだろうか。
もっと強気でいなくてはならないのに、と名無しは少々己の弱気を責めた。
自分はもっと頑張らなくてはならないのに何をしているのだろう。





























「名無しさんらしくないですよ、そんな弱気な顔して…。
すいません…。俺がなんか変なこと言っちゃったからですね…。」


































「ううん、いいの。むしろありがとう。
弱気でいちゃだめだって思えたから逆に感謝してるよ?
私頑張るからさ…。」
































「はい、俺も頑張ります。
だからその…お願いがあるんですけどいいですか?
もし俺がどこでもいいから試合に出してもらえたら…い、いっ、一日デートしてください!」



































「うん、わかった。いいよ?」


















































いいよ、という答えに嬉しそうに目を輝かせる立向居。


その後日。
試合に出してもらえた立向居は名無しと一日だけデートをことになった。


たった一日だけでも憧れの先輩との外出はとても有意義なものであった。






















































「今日はありがとうございました。
とても楽しかったです。」



























「ううん、私も楽しかったし…息抜きになったよ、ありがとう。」






















































お互いに歳も性別も違うけれど頑張るということは同じ。





励まし合って、お互いに刺激し合う。





いつまでもそんな先輩と後輩でありたい、






きっとこの先も

そんなことをお互いに思うのだろう。




































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