はじめて会った時からあいつは他の奴とはなにかが違っていた。




俺はクラスの奴らともそれなりには仲がよかったし、つるもうと思えばそこにいられた。

でも、何故だか俺は猿比古といた。



あいつは入学当初から誰ともつるもうとせずずっと一人でいた。
周りもあいつの出す空気にビビって近付こうとしない。




そんな猿比古に俺は引き寄せられるようにして隣にいた。
最初はうっとおしそうにしていた猿比古もいつの間にか受け入れてくれていた。



いつからかそんな猿比古に友達としてではない、好意を抱くようになった。


猿比古と過ごす何気ない日々や日常は俺のつまらない毎日に光をくれた。



時より見せる仕草や、言動でなんとなく猿比古も俺に好意を抱いてくれているのかもしれない...と思うことがあった。


でも...


もしそれが俺の思い違いで、なんとも思っていなかったら、もう取り返しがつかない。

第一、猿比古は執着を嫌う。


きっと俺なんかに縛り付けられるのは嫌だろう。



もう何年もずっと悶々と悩み続けていた。




でも、今はその迷いを恨んでいる。


もっと早く想いを伝えていたらこんなことにはならなかったかもしれない。

猿比古が俺の前からいなくなった今、ひどく後悔している。



ずっと一緒にいられると勝手に確信していたから...
いつでも伝えられると思っていたから。



それなのに猿比古はもう俺の隣にはいない。




「好きだよ、猿比古」



届くことのない言葉と想いが空に溶けて消えた。


もうお前は俺と一緒にはいてくれない。
わかっていても受け入れられることじゃない。


なぜもっと早くこの言葉が言えなかったのだろうか。



「好きだ。
好きなんだよ、猿比古ぉ...
なんでいねぇんだよ」



虚しい叫び。
もう向き合うことも、並んで歩くこともできない。

全部俺が悪いんだ。
ビビって、自分の気持ちをぶつけられなかったから。



もう、二度と言えない。



猿比古とならどんなに暗い闇の中だって歩いていける気がしたんだ。

迷ってもいつもお前が迎えに来てくれるから。



お前は俺の道を照らす光だった。





もう俺の歩む道に光はない。
俺はずっと迷子のまま...
真っ暗な闇の中ただお前への愛を叫ぶことしかできない。




「猿比古、愛してる」