朝練が終わった後に、シューズを履き替える為に昇降口に向かったら、何だかいつもより若干うるさかった。
なんだよ朝からなんかあったかと思いながらもあたりを見渡していたら、とある1年の靴箱がバレンタインの当日のようにプレゼントの被害にあっていたから、ああコレで騒いでいたのかと思うと同時にビビった。……うおっ、なんじゃありゃ。

俺は朝練でやや疲れた体を動かして、興味本位だけで靴箱の主の名前を見ようと1年の靴箱に近付く。なんであの靴箱だけがあんなプレゼントだらけという謎の襲撃を食らっているんだろうか。新手のいじめかなんかか?、それなら御愁傷様だなあと思いながらも緩慢な仕草で靴箱に近付けば、同じく朝練帰りの黄瀬が俺の存在に気付いて、「あれ?、どーしたんスか?、苗字センパイ。」と話しかけてきたので、俺は視線を黄瀬にやった。黄瀬は相変わらずのキレイな顔で、首を傾げながら俺にさきの質問の答えを待っていたので、俺は「あー、」と少しだけ言葉を濁しながらも、靴箱を指差して言った。

「あの靴箱、なんかすげー襲撃に遭ってるだろ?」
「へ?、……っあ、あ〜〜……。」
「なんだ?、あの靴箱の主と知り合いか?」
「イヤ、知り合いっつかアレ……。」
「???」
「オレの靴箱ッスね……。」

そう言って心底めんどくさそうに溜め息を着く黄瀬に、俺は苦笑いを零しながらも疑問を深める。

あの靴箱の主が誰か分かったのはいいが、今度は「何故」靴箱が襲撃されているのかが気になったからだ。

黄瀬はモデルでバスケ部のエースだ。顔が良いので女子生徒からの人気は厚いし、その反面で犬っぽいキャラクターが男子生徒にもいじりの対象としてある意味で愛されている。だから男女共に受けは悪くない。から、誰かから嫌われていたり恨まれるような雰囲気は受けなかったのだが…。

「なんであんなに襲撃されてんの?」
「へっ??」
「いや、バレンタインでもなんでもねーのにお前の靴箱プレゼントでいっぱいじゃん??、だからなんでかなって。」

なぁ、なんでなんだ?
近くにいた黄瀬に、今度は俺が首を傾げながら伺うと、黄瀬は凄くションボリした顔つきで「センパイ…今日が何の日か知らないんスね…。」と言われた。ん?、今日はなんかの記念日だったっけ?

心底分からなかったので、ションボリした顔の黄瀬に取り繕うように謝りながらも、何の日かなおも尋ねる。すると黄瀬はハァ、と一つだけ溜め息を着いて、「今日、オレの誕生日なんス。」と拗ねたような顔で言われた。あ、そうだったのか。

「だからあんな襲撃を食らってたのか。なるほどな。」
「えー、お祝いしてくんないんスか!?、これから祝ってくれても良いっスよ!?、##NAME4#センパイ!!」
「これから、っつっても、今日はフツーに学校だし、お前今日放課後練の後にモデルの仕事入ってんだろ?、どっこも寄れねーじゃん。」
「うっ!!…ぐぬぬ…!!!、今日予定いれたマネージャーがニクいッス…!!!」
「まあまあ、ドンマイ。じゃーな。」
「……あっ!!センパイ!!逃げるとかヒキョーッスよ!!?」
「しーらね。」
「ちょっ!?」

祝ってくださいよぉおおセンパ〜〜〜イ!!!!、とエコー気味に聞こえてきた黄瀬の言葉をガン無視して俺はクラスへと向かう。いや、ホントに誕生日プレゼントもなんも用意してないから祝うに祝えないのだ。どっか行くのもムリだし。それに祝うならちゃんと祝ってやりたいのがA型の俺としての矜恃だ、だから許せ黄瀬。俺はそんな事を頭の中でブツブツと呟きながらクラスに入った。すると部活仲間で同じクラスの中村が「黄瀬からたかられてたな、ドンマイ」と言ってきたのでほっぺたつねっといた。うるせーよ中村。つーか知ってたんなら助けろよボケ。そんな事を思いながらも中村のほっぺをギリギリとつねっていたら、担任がやって来たので俺は席についた。それから時間は水が流れるようにしてサラッと過ぎて行った。



〜1限目〜
「(しっかし、黄瀬の誕生日か……祝ってやるべきか…?、………笠松センパイは祝うのかな…。メールしてみよ。…”笠松センパイは黄瀬の誕生日は祝いますか?”…っと。そーしん。)」

〜2限目〜
「(あ、メールの返信来た…”そんな事より授業に集中しろ。”……うっわ正論…。)」

〜3限目〜
「(つーか祝うにしてもプレゼントもなんもねーしなあ…。…あー、昼に一回抜けて、駅まで行けばなんか売ってあるか…?)」

〜4限目〜
「(つーかプレゼントっつっても好み外したらいてーよなあ…。…やっぱ無難なモンにするべき?、…ってか、なんだかんだでこれもう祝ってやる流れだな…。)」

そんなこんなでグダグダ悩んでいたら、昼になったので、俺は脳内会議の流れ通り一度学校を抜けて駅前の雑貨店へと向かった。そこで10分そこらで選んだシルバーアクセサリーを買って、包装してもらってまた学校へと帰った。黄瀬へのプレゼントを買った後にスマホで時間を確認すると、あと10分で昼休憩が終わりそうだったので、俺は黄瀬にLINEで電話して、屋上に来いと言った。すると黄瀬から今すでに屋上にいると言われたので、俺は学校についたらすぐに走って屋上へと向かった。そして屋上のドアをあけると、そこには笠松センパイ、森山センパイ、小堀センパイ、中村、その他1軍レギュラーと黄瀬が居た。みんなでちっちゃいパイケーキを食べていたり、黄瀬が他の奴らからプレゼントを貰っているあたり、なんだかんだでみんなちゃんと黄瀬を祝う気だったんだなと感じて笑える。黄瀬、愛されてんなあ。そんな事を思いながらもボンヤリと一行を眺めていると、黄瀬が俺の存在にきづいて満面の笑みで手を振って来たので、俺は笑いながら黄瀬に近寄ってエルボーをかけた。


「っちょ!!、センパイ痛い痛い痛い!!、首!!、首締まってるッス!!、センパイ!!」ギリギリギリギリ
「ホラ、黄瀬、やるよ。」ポイッ
「いたいいた…って、え?、…なんスか?、コレ。」

エルボーをかけながら黄瀬に渡したのは、俺がさっき駅前の雑貨店でソッコーで買ってきたシルバーアクセサリー。……まあ、ピアスなんだけど。

「…ほらよ。急いで買ったし、安っちいモンだけど、てめえにくれてやる。」

そんな事を脳裏で呟きながらも黄瀬にだけに聞こえるようにそう呟いて、プイと顔をそらせば、俺にエルボーをかけられた黄瀬は顔を真っ赤にしながらすげーキラキラした顔で「もう!!…センパイ大好きッス…!!」って言い出したからなんかもう恥ずかしくて死んだ。ついでに言うと笠松センパイに蹴られて痛かった。痛いよ笠松センパイ。

「苗字センパイ好きッス!!、お嫁さんにしてください!!!」
「だが断る!!!」
「えー!!なんで!!!」
「おめーらうるせーしむさ苦しいんだよ!!!、イチャつくなら俺らの目の届かない場所でやれ!!!!」
「!!、じゃあ笠松センパイ達の目の届かない場所でならイチャついても良いんスよね!?、行きましょ苗字センパイ!!」
「だから俺の手を引いて駆け出すな!!!」





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ハッピーバースデー黄瀬。









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