先月のからっとした五月晴れの日々から一転。6月に入ってから続く盥をひっくり返したような空模様に、俺は少しだけ溜め息を着く。

6月はこれだから嫌なんだよなあと、窓に打ち付けられた水滴を眺めながら、0.3ミリのシャーペンをノートの上に滑らせた。

「(今日は翔一の誕生日なのに。)」

黒板の数字の羅列を写しながら、頭の中でそんな台詞をボヤく。

そう、今日は俺の親友である腹黒メガネこと今吉翔一の誕生日だ。
誰かの誕生日を祝うのに天気はあまり関係ないが、雨が降るより晴れていた方が俺の気分的に好きなので、最近続く雨も今日くらいは止んで欲しかったなあと思っているのが今の俺の心情と言うわけだ。
因みに誕生日プレゼントはうな重。老舗の良いやつをネット予約して今朝届いたので、今日の昼にあげるつもりだ。プレゼントなのにモノじゃないのは、あいつはこだわりが強そうなのであげたところで気に入って貰えるか分からなかったからである。まあ本人にそう言うと「名前のくれたモンやったらどないなモンでも嬉しいわ〜」とか胡散臭い笑顔で言われそうだが。

ーーーと、そこまで考えながらシャーペンを動かしていると、机の上に広げたノートの上に、てんてん、と紙くずのようなものが転がって来た。なんだこれ?
転がって来た方向を見ると、そこには今、俺の話題になっていた翔一が、ついつい、と紙くずを指差しながらニヤニヤ笑っている。読めってことか、と翔一の気持ちを察した俺が、大凡翔一から書かれて投げられたであろう紙くずを開いてみる。くしゃくしゃに丸められた紙くずを、ゆっくり開いて読んでみれば、しわの寄った紙には、「うな重、おおきにな。」と翔一の神経質な字で書かれていた。









「………なんで分かったんだ?」
「昼飯奢ったるー、とか言う唐突な発言とか、机に引っかかっとった妙な袋とか、な。」
「………よくみてんのな。」
「お前見てんのは飽きへんからな。」
「なんだそれ。」

昼休みになってから、プレゼントのうな重を食わせながら翔一にそんな質問を投げかけたら、あっさりとそんな返答をされた。俺を見てるのが飽きないなんて、ホントなんだそれ。

まあこいつは俺と違って頭良いから何考えてんのか分からん節が多々あるから、これもそう言うことにしとくべきかな。こいつに対して色々考えんのはなんか無駄な気もするし。


俺は翔一との問答にそうやって終止符をつけて、母さんが作ってくれた昼飯をもそもそと食う。
そして俺がミートボールに手を付けた時に向かいの翔一の口元にご飯粒がついてるのが目に入ったので、不意にご飯粒を取って食ったら、すっげえポカンとした顔をされた。

「………。」
「…?、何固まってんだよ。」
「…………なんやそれ。うな重よりビビったわ。」
「は?」
「………いや、なんでもあらへんわ。」
「?、あっそ?」
「おん。」

そうやこいつ天然モンのタラシやったな、とか、誕生日やからか?、とか、 なんか色々聞こえた気がしたけど、とりあ
えずせっかく良いとこのうな重取り寄せたんだからもっと旨そうな顔して食って欲しかったなあと思った。

「あ、つか翔一、おたおめ。」
「前後し過ぎとちゃう?」
「細けえこたぁ良いんだよ。」
「………さよか。」




ーーーーーーーーーーーーーーーーー
投げやり今吉誕。
だいぶ過ぎたけど許してね。











×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -