(※お子ちゃま三人組視点) ちょっと前から、街や山であそんでいた時に見つけたヤツがいるんだけど。 「―――――おいバナン!!、またアイツ、きてんぞ!!」 「わ、ホントだ。」 くすんだ茶色い髪の色に、金色とも薄い茶色とも言える目をした、オレたちとおんなじくらいの年のヤツ。 顔が女の子みたいにキレイな顔をしていて、そんで、いつも一人で走ったり腹筋したりしてる、変なヤツだ。 そいつは山の方に住んでいるらしくて、時々まちに来ては、まちの景色を見ながら脇の小道で走り回っている。 一人で遊んでる、悲しいヤツだ。 そしてオレたちはそんな寂しいそいつを見かけると、いつもちゃかして遊んでいる。 なぜなら、コイツはいくらバカにしても言い返してこないからだ。 シナくんがおかしを食べすぎたって言ってシナくんのお母さんから怒られた時は、シナくんは八つ当たりとしてあの女男を探しだしては、その女男の目の色をバカにしてうっぷんをはらしている。 女男の目は、金色とも薄い茶色とも言える、アンバーって色の目だ。 そしてアンバーって色の目は、オオカミの目に多いって、ユーリから聞いた。(ユーリのお父さんはここいらじゃめずらしい、ケモノを狩って暮らしている人だ。) ニンゲンのくせに、ひとみの色がオオカミと一緒なんておかしい。 だからオレたちは女男の目の色をバカにするんだけど、実はオレたち三人は誰ひとりとして、あの女男のことをキモチ悪がってない。 むしろ、オレたちはアイツのあの目を、すごくキレイだと思っている。 太陽みたいにキラキラした金色、薄い茶色、濃い黄色。角度によっては色んな色に見えるそいつの目は、ずっと見ていても飽きないし、ずっと見ていると、変なキモチになるんだ。 あの目が泣いたらどうなるんだろう。 もしかして涙も金色なんじゃないのかなあ。 泣かせてみたいよなあ。 そんなキモチもあったから、オレたちはムカムカした時以外にも、アイツを見つけた日には、こぞってアイツの目の色をちゃかした。いつか泣くかも知れないのを、願って。 ―――――そして、そのチャンスは唐突に訪れた。 「おまえのとうちゃんもオオカミやろうだし、おまえのかあちゃんなんかカラスのめだ!!」 「オオカミとカラスの子どもが、ニンゲンさまにばけてんじゃねーよ!!」 ―――――女男とたまたま街中であった時に、シナくんとユーリが、そう言った。 このちょっと前の日に、コイツの両親がどんなヤツか分かったからだ。 女男の父親は、女男とおんなじ色の髪と目をしていて、女男の母親は、女男に似たキレイな顔をしていた。 ただ、母親の方は、ここいらじゃ見かけない、黒髪黒目の変な女で、父親もオオカミの目で母親は黒髪黒目だなんて、これは絶好のちゃかしの文句になるかもしれないと、三人で考えていたのだ。 ―――――いつもとはちゃかしの文句がちがうけど、この女男は泣くだろうか。 シナくんやユーリとにやにやしながら眺めていたら、女男の体はぷるぷるとふるえだし(お、泣くのか!?)、やがてうつむかせていた顔を上げて、こっちを見てきた。 ――――――そしてその眼差しに、動けなくなった。 ハチミツ色のキレイな目も、今はタカのような鋭いひとみに見えた。 細められた目が、恐ろしく冷たい。 そんな目に見つめられて、オレたちはせなかがゾクリとすると共に、食べられてしまいそうだと思った。 「………とうさんとかあさんのわるぐちを、いうな。」 ―――――アイツは、泣かしちゃいけない。 怒らせても、いけないんだ。 さもなければ、オレたちはくわれてしまう。 ――――オレたち三人は、アイツのキレた声を初めてきいた時、つくづくそう思った。 ――――――――――― お子ちゃま三人組をどぎまぎさせちゃうアンバーの瞳。 私はアンバーも好きですがヘーゼルも好きです。 |