ーーーそんな訳で、母さんから無事、「訓練兵団に行って来て良いわよ」っていう許可を貰ってから、さらに修練を続けて3年が経った年。 俺ことカスガ=アッカーマンは無事に12歳になり、そして国から就農者(生産者)になるか兵士になるかという選択を迫られたので、迷わず兵士になると家族と国の関係者(要は役所の人間だ)に言った。役所の人間は俺の判断にへーこいつ変わり者だなあ(こいつバカじゃねーの)と言う顔で俺をみていたが、まだあの時(845年、シガンシナ区陥落)になっていないからこんなリアクションをされるんだろうなーと思いつつ、訓練兵団に入隊するための手続きをした。 そして、その手続きをする前。 家族には、事前にパパ上とママ上は口説き落としていたので渋々ながらも了承を得ていた訳だが、7歳になって可愛さに磨きのかかって来た俺のマイエンジェルことミカサたんはどうかというと………俺が兵士になる事に、ぜんっぜんオッケーを出してくれなかった。 「ぜったいだめ。だめだよ、おにいちゃん。…あたし、おにいちゃんとはなればなれになるの、ぜったいいやだからっ…!!」 俺が兵士になると言った時、ミカサは俺にそう静かに言葉を返してきた。 …これは顔を見なくても声色だけで分かる。 ミカサたん、超怒ってる。ていうかこれは多分怒る飛び越えて泣きそうになっているなあ。 試しに逸らした視線を戻してチラリとミカサたんの顔を伺えば、案の定俺の目の前にいる小さなマイエンジェルことミカサたんは、両目にうっすらと涙の水膜を滲ませていた。 ああこれが罪悪感ですね分かります。 俺は内心そんな事を思いながら、「ごめんな」と呟いてミカサたんの頭をぽふぽふと撫でてみる。これで許してくれないかなーと思いつつもミカサたんの反応を待っていると、やはりそれではミカサたんは許してくれなかったらしく、俺をちょっとだけ睨んでから、ぷい、とそっぽを向いて子供部屋に走り出した。 …べ、別に、生まれて初めて妹から無視されたから、とかいって俺が泣きそうになんかなってないから。() …そんな事ないからな() なんて涙目になりながら震えている俺をよそに、ママ上とパパ上が呑気に会話をしているのが聴こえる。 「あら、あの二人が兄妹ゲンカしてるわ…。」ひそひそ 「ミカサはカスガの事、大好きだからな…。」ひそひそ 「なんにしても、あの子達が生まれて初めての事よね…。」ひそひそ 「ああ…明日は雨かもな…。」ひそひそ …おい、ママ上とパパ上や。お前ら何楽しんで兄妹ゲンカ傍観してるんだよ。 ケンカしちゃってブロークンハートな俺とミカサを慰めるとかしてくんないのかよ!!!ていうかしようよ!!! 俺はそんな事を思いながらも、夕食後のリビングから抜け出して、ママ上が事前に沸かしてくれていた風呂を入った。 一番風呂だけど関係ねえや。パパ上に一番風呂なんかやらん。ミカサたんから生まれて初めてシカトされた事でやさぐれ少年へとジョブチェンジした俺は、そんな事を思いながらも風呂を入り、その日は眠った。 明日になったら忘れてくれるだろ、とか、かんがえながら。 ーーーーーーーーーーーーーーー はじめてのケンカの話。 |