―――――そんなこんなで、エレンとミカサからすごすぐる誕生日プレゼント(メイビー琥珀)を貰い、その晩の風呂中にミカサに「カスガ、出て行きまーす!(アムロ風に)」って宣告してから、早くも数ヶ月。 ―――――あの時二人から貰った琥珀は、原石で持っておくのはアレだし、肌身離さずいつも持っておきたかったので(ミカサ達から初めて貰った誕生日プレゼントだし、それに確か天然石ってなんかパワーがあるんだろ?、あやかりてぇじゃん。)、知り合いの石工のオッサン(アンドリューさん)に頼んで、ピアスに加工して貰い、両耳にピアス穴を開けてからつけて貰った。 そんでそん時に、この時代にはピアッサーなんていう文明の利器(?)がないので、この時代でピアスを開けるには針で手動だと知り、もんのすごい後悔と痛み(だって耳に針グリグリすんだぜ…!痛ぇわ…!)と共にこの両耳にピアス穴が開けられたのは、まぁ閑話休題なんだけど…。 ともかく、そんな訳で、まぁちょっとした事件が起こりつつも、またいつもと変わらない日常を過ごしていた俺だったが…、誕生日から数ヶ月経った今、実は前とは1つだけ変わった事がある。それは。 「…カスガ。お母さんのお手伝いをしなさい。」 「…、はい。」 「わたしも!」 「ミカサはお皿を出して」 「はあい!」 …お父さんとお母さんが、俺を異常に家から出さなくなった事だ。 …9歳になるより前は、俺は普通にパシリ名目で薪拾いに行きつつもトレーニングしたり、…三段跳びの他にも体幹鍛えるためにロッククライミングしたり綱渡りしたりと独自で訓練をしてたんだけど…。薪拾いにはとんと行かせて貰えないし、遊びに行くのもだいたいエレンが遊びに来たときくらいしか外に出られなくなってしまい、殆ど外出出来なくなってしまったのだ。 なんてこった。 そう思って家の中でコッソリトレーニングしようにも、腹筋や背筋してただけでお母さんに止められ、最近出来るようになった逆立ち片手腕立て伏せ(そういやD灰のアレンもしてたっけな、)なんかをしようモンなら物凄い顔で怒られてしまう始末だ。 …これは何かあるにちがいない。 ―――俺はそう思ったので、ズバリ単刀直入にマイマザーに訊いてみる事にした。 「…母さん。」 「あら、どうしたのカスガ。」 「聞きたいことがあるんだけど。」 「なーに?」 テーブルを拭きながら首を傾げる我がママンに、俺はスッと目を細めて見つめる。 ママンはそんな俺の変化に気付く事はなく、言ってごらんなさい、と急かしてきたので、俺はじゃあ、と呟きながらママンに尋ねた。 「どうして最近外に出してくれないの。」 「……べ、つに、外に出してないことはないわ、」 「薪拾い、させてくれなくなった。」 「!」 「外に行くのはエレンが遊びに来た時だけだ。」 「…そ…そうかしら?」 俺がそう問いかければ、ビックリして目を見開いたのち、ママンはしらばっくれるようにして目を逸らす。 あ、ママンってウソ付くの下手くそなんだなーって思いながらも、目を逸らしたママンに追い討ちをかけるようにして問い詰めれば、ママンはボソリとこんなセリフをこぼしてくれた。 「…ねえカスガ。…ミカサから訊いたんだけど、…訓練兵団に入りたいって言うのは…ウソよね?、…進んでそんなのに入りたいだなんて…。」 …おおう直球。 物凄い真ん中ドストレートだねママン。もっと遠回しに言わないのかねワトソンくんや。 そんな事を頭の中で呟きながらも、俺はママンの言葉に返事を返す。 「…本当だよ。」 「っそんなのダメよ!!」 「……?」 すると物凄い剣幕(と速さ)で一蹴された。 ぱねぇ。なんだ今の速さ…リヴァイ兵長のそれよりもずっと速ぇぞ…!?、と胸中でママンの却下の速さをこの世界風に解説していると、悲痛な面持ちをしたママンからこんな話を持ち出された。 「訓練兵団なんて…死ぬかも知れないのに…。…いいえ、それよりももしうまくいって調査兵団になんて入られたら…!!」 ……ああ、そう言えばそんな話も、聞いたっけな。 訓練兵団に入団すると、過酷な訓練を日々強いられるので、脱落したり死んでしまったりするのが日常茶飯事なんだと。 しかもそんな状況下で死に物狂いで生き残ったところで、今の時代では巨人と戦う戦力はほとんどないから、周りからは税金の無駄遣いだと蔑まれ、疎まれ続けるんだとか。 恐らくこの人は俺がそうなるのを危ぶんで、こう言ってくれてるんだろうけど…。…ホント、母さんは優しいなあ。まるで他人事のようにそんな事を考えながら、ダメだイヤだと拒否する母親に、俺は話しかけた。 「"東洋人"。」 「…っ!?」 「…俺と、ミカサは、東洋人の血を引いている。…そうだよね?」 「そ、それが何?」 「"東洋人の女は高く売れる"。」 「!?」 「…風の噂で聞いた。人身売買、って言うんだよね。」 「…カスガ…?」 俺の名前を呟いて、驚いたような顔をする母さんに、俺は視線を逸らさずに尚も話しかける。 「…ミカサは、髪の色も目の色も、母さんに似た。」 「…俺は、髪の色も目の色も、父さんに似た。」 「母さんは東洋人。…父さんは違う。」 ここまで言えば、おかわり…じゃねーや、お分かり頂けるんじゃなかろーか。 つまり俺とマイエンジェルは兄妹であれ色が全く似ておらず(造形は!そこそこ似てるが!)、加えてマイエンジェルは東洋人の血を結構色濃く引いちゃったので、シャボンティ諸島のオークションに出されたケイミーの如く人拐い及び人身売買の格好の的になりやすい、と言うわけなのだ。 なんてこった。パンナコッタ。マジやべぇよ。 ―――――と言うわけで「俺、このままじゃダメだと思うんですよね」って言う旨をママンに伝える。するとママンは目をかっぴらいて俺をガン見して来たので、俺はママンの目の乾燥の心配をしながらも、ママンに向かってこう呟いた。 「…家族を守るためには、畑を耕していられない。」 「え、」 「…俺は強くなりたい。隠れなくても母さん達が暮らせるように。」 「その為の、訓練兵団だ。」 俺がそう呟けば、ママンは膝から崩れ落ちるようにしてその場に座り込んだ。 気付けばママンは目からツウウと涙を流している。 俺はそんなママンの優しさをぼんやりと眺めながら、励ますようにしてママンに呟いた。 「別に調査兵団になるつもりはない。……それに、憲兵団になれれば、沢山お金がはいる。父さんにも母さんにも、楽させてあげられる。」 「…カスガ…、」 「お願い、母さん。」 俺に、大切な家族を守るだけの力をくれないか。 そう諭すようにママンに言えば、ママンはかなり悔しげな顔をしながら、俺のお願いにこう答えた。 「…………ぃ、」 「…?」 「ぜったい、生きて帰って来るのよ。」 「…勿論。」 その為にワタクシは星飛雄馬も顔負けの努力をしているのデース!!とペガサスの口調で胸中で呟きながらも、俺は目からハイドロポンプな母さんの背中をさすりながら、改めて頑張る決意をした。 作戦:いのちをだいじに ――――――――――― 親からの了承編。 基本的に親からの反対意見ってのはだいたい異性の親の牙城を崩せば勝利だと思う。 結婚を許可して欲しい娘と父親とかな。 今回もそれに似ていると思う。 そしてチラッとピアスのネタばらし編でした。 青年期の画像のピアスは全く琥珀に見えないんだきどね!爆 あれは誕生日に貰った琥珀を原石に作られたものでした。と言うね。 立派にシスコンなお兄ちゃんである。 |