さてはて、エレンと会って初見でチューされた、なんて事が起きてから、更に1年という月日が経ち―――――― 「―――――っ…!!」 「はい終わり。…カスガ、良く我慢したわね。」 「……ん。」 (身体能力的な意味で)人一倍元気に9歳の誕生日を迎えた俺は、母さんから東洋人の刺青を受け継ぐ事となった。 どうもこんにちは、今日も元気なカスガ=アッカーマンです。 「(…つうか痛いマジ痛い激痛ヤバいハゲ散らかるレベルで腕が痛いヤバいヤバい)………。」 ―――――そうそう。 さっき言った通り、俺は今、母さんによって腕に東洋人の証の刺青を刻まれたんだけどさぁ…。……コレ、なんでもないように見えるんだけどえげつない痛いんだぜ…。 …いやだってね。 この世界のこの時代ってマジでなんも発達してなくて、調味料は醤油もみりんもねぇし、文房具っつったら鉛筆とパン(消しゴム代わり)が普通だから、もちろん医療用の麻酔なんか当たり前にあるはずもなくてだな。麻酔じゃなくて軽い大麻なら普通に売ってるらしいけど(この世界マジで怖ェ)、そんなん使って刺青入れるくらいなら麻酔なしの方が良いに決まってます本当にありがとうございました。ってなわけで麻酔なしでやったけど…。 「(あれはトラウマになるレベルだわ…。)」 良くわからん刺青…なんか、ダイヤの形みたいな、幾何学模様みたいな、ゼルダのマークみたいなのが組合わさったような…ホント良くわからん刺青入れられて、血だらけの腕に消毒もナシに包帯巻かれてさ…。 …いや…もうすぐイェーガー先生が来て俺の傷診察しに来てくれるらしいけど、消毒もナシにこんなんされたらもうただのケガだろって感じだからね。刺青じゃなくて下手したらDVだからね。子ども虐待にだってなりうるからね母さん。まぁ、そんな事思っても言わないけどさぁ…。 ―――――そんな事を思いつつ、俺は母さんから包帯を巻かれた方の腕を見やる。ジワリと赤の滲む包帯に少しだけ目を細めながらも、俺は先の未来の事について思考を巡らせた。 「(……あと、5年か。)」 ―――――確か、俺の記憶の中にうっすら残っているストーリーでは、ミカサが腕に刺青を入れる日に、俺のお父さんとお母さんが、人拐いに、殺されるんだっけ。 ―――――俺は今日が9歳の誕生日で、この刺青の風習は、数え年で10歳になる時に親から子どもに一族の証として刻んでやるものらしい。つまり、逆に考えれば、ミカサが9歳になる誕生日に、ウチに人拐いどもが現れる。 「(…無理無理怖い怖い人拐いとかホント死ねば良いタンスの角に小指ぶつけて悶絶してる時に身長1hydeくらいのちっちゃいおっさんに首削がれればいい。)」 ―――――人拐いとかマジで怖い。マジで怖いと思うけど。 「(……護りたい、よなぁ。)」 ―――――あと5年後なら、5年のうちに強くなって、家族を護りたい。 俺はその時14歳で、俺の1歳の時に決めた決意(調査兵団に入って家族を護る!)通り、計画通りに事が進めば、14歳の時には訓練兵団で2年目の訓練兵として存在しているんだろう。 訓練兵団については少しだけお父さんから話を聞いた事がある。この世界にはキリスト教なんていう宗教がないから、毎週日曜日は休日、なんていう考え方もないし、市場も両替商も基本的に不定期の休みをとっているんだけれど、でも、どうやら訓練兵団では月1で自由に休みをとっていい制度があるらしい。 んで、ここまで言えばわかるけど、その年の、その月の休みをミカサの誕生日に充てる。 そしたら俺の両親は死なないし、ミカサもぼっちにならずにすむ。 でもその次の年にウォール・マリア壊されるんだし、そしたらどっちにしろ死ぬかも知れないじゃんって思うかも知れないけど、んな事もない。 それまでにウォール・ローゼに両親を移住させる。ローゼの方が治安が良いからって唆して、どうにか移住させれば良いのだ。 幸い、うちの家庭はそこまで貧しくないし、頑張って王政府に申請取れば、移住も可能だろう。イケる。 「(―――――そうすると気になるのはエレンの家庭だけど…。)」 ―――――エレンの家庭も、救えるか? 「(………頑張れば、イケるかな…。)」 …ああもう!!、俺所詮バカだから色々考えんの苦手なんだけど…!!、とりあえずこれから先の予定は、「訓練兵団に入って2年目になったら、ミカサの誕生日に絶対帰省する」って事と、「ウチの両親をウォール・ローゼ内に移住させる」って事を目標に頑張ろう!!! 血の滲んだ包帯をボンヤリと眺めながら、俺は改めてそう決意した。 「(……まぁまだ俺、兵団に入りたいって両親に言ってないんだけどねー!!!!)」 ――――――――――― 整理回。 進撃の公式ガイドブックに、ミカサの腕に刺青が入れられたのが6年前?ってあったので、逆算して数え年10歳の頃としました。 寧々子バカだから整理回書くの下手くそなんだよな。 |