今日は母さんが昼からまちの仕立て屋さんに行っていたせいで、昼からオーシンの入っていたとうさんは「エレンを一人で家に居させる訳には行かない」って言って、おれをカンジャの家に連れていくことになった。 おれは別にひとりでもダイジョーブだっていったのに、とうさんは「同い年くらいの子もいるから、私が患者さんを診察している間は一緒に遊んでいなさい」って言って、おれをムリヤリつれてった。おれがおもうに、とうさんはすこしリフジンで心配しすぎだと思う。おれひとりでも、何かあるわけなんかないのに。 そんなこと思いつつもとうさんに手を引かれながら、とうさんの言う"カンジャ"の元へと向かう。 そうしてとうさんに手を引かれつつも、なんじゅっぷんか歩くと、その"カンジャ"の家が見えてきた。 「―――――ほら、ついたぞエレン。」 「―――――っ、」 そうしてすぐさま、とうさんはおれを引っぱりながら、カンジャの家に入った。 とうさんはおれがカンジャのことをしらないっていってるのに、気にしないでぐいぐい入っていく。 でも、おれはとうさんと違ってカンジャがどんなやつかも知らないし、会ったことないしわかんないから、怖かった。 「(すっごい怖い人だったらどうしよう。すっごいイヤな人だったらどうしよう。)」 そう思って、びくびくしながら家に入ったけど、とうさんはカンジャの家に入るなり、すぐに人を呼んで世間話をし始めた。 おれの気も知らないで、とうさんはひどいとおもう。 ともかくカンジャが怖いやつだったらイヤだと思ったので、おれはカンジャから話しかけられないようにとうさんの後ろに隠れた。 でもどうやらそのカンジャと言うのは、とうさんと話をしている人らしく、またその人は女だったからそんなに怖くないのかもしれないと思った。 でもどんな人かわからないし、怖いやつじゃなくても、やっぱり顔を出すのが恥ずかしかったので、そのままおれはとうさんの後ろに隠れて、とにかく早くオーシン済ませちゃえよって思っていた。 ら、いきなりとうさんから、そろそろ前に出てこいって言われた。 出てこいって。なんでだよって聞いたら、お前の遊び相手が来てくれたって言われた。そんなの用意して欲しいとかいってないのに。 とうさん、リフジンだなあ。 なんて、思っていたら、しびれを切らしたらしいとうさんに、前に出てくるように引きずり出された。おれの視界は一気にひろがる。 「…っ、と、とうさ…っ、」 ふざけんなよとうさん!、そんなこと思いながらもとうさんをにらみつけていたら、なんとなく前の方からしせんを感じて。 次はなんだよ?、って思って、しせんを感じた方を見ると、ひとりの人と目があった。 「ッ!?」 「………?」 ―――――そしておれは、その人の顔を見た時に、もしかして今、時間が止まってるんじゃないか、って思った。 ―――――黄色と薄茶色と、金色みたいな色が混じったみたいな、不思議な色の目をした、人。 くすんだ茶色の髪の毛は、鮮やかな色ではなかったけれど、あたたかくて柔らかい色だと思った。 ―――――年はおれよりも何個か年上なのかなぁ。 柔らかい色をしたその目は、くすんだ茶色の髪の毛は、なぜだかすごくすごくキレイに見えて、おれの知ってる言葉じゃ言えないくらい、キレイだった。 ああ、キレイ。 キレイな目だなぁ。 柔らかそうな髪だなぁ。 いいなぁ。ほしいなぁ。 それにあのお兄ちゃん、キレイな顔をしてるし、なんかすごくいいなあ。 ―――――欲しいなぁ。 ―――――あのキレイなお兄ちゃんが、欲しい。 そんな事をボンヤリと思いながらも、キレイなお兄ちゃんを眺めていると。 「……エレン?」 「…ッ、!!」 ―――――お兄ちゃんから、いきなり、なまえを、呼ばれて。 「(―――――おれの、なまえ。)」 ―――――お兄ちゃんが、おれの、なまえ、よんだ……!! ―――――たったそれだけのことだったのに、 胸がドキドキして、身体が熱くて、どうしようもなくなった。 ―――――ああ、お兄ちゃんにもっと名前を呼んで欲しい。 もっと笑っていて欲しい。 そして、あわよくば頭とか撫でて欲しい。 ―――――お兄ちゃんが、欲しい。 ―――――お兄ちゃんを見ながらそんな事を考えていると、「にーたん、だーれ?」、と言う声がどこからかきこえてきて、おれはハッとした。そう言えばお兄ちゃんの首に誰かくっついてるけど、誰だろう? お兄ちゃんやお兄ちゃんの首にくっついているのを眺めながら、そんな疑問をボンヤリを思っていると、お兄ちゃんがまたおれに話しかけてくれた。 「…オレは、カスガ。カスガ=アッカーマン。…こっちはオレの妹のミカサ。…よろしく、な?」 そう言ってニコリと笑ったお兄ちゃんに、内心ものすごくどきどきしつつも、おれは「ん?」、と首をかしげる。 「(…あの、お兄ちゃんの首に引っ付いてるやつはお兄ちゃんの妹らしいけど…、)」 フツー、妹ってお兄ちゃんに似てるものじゃないの? お兄ちゃんとお兄ちゃんにへばりついてるやつ、髪の毛の色が全然違うじゃん。 アイツが女(髪が長いから、多分女だ)だからかなあ。 おれはそんなことを考えながらも、お兄ちゃんからよろしくと言われたので、恥ずかしいけどなんか言葉を言わなくちゃと思って、しどろもどろになりながらもおれは返事を返した。 「………ょ、ろしく…。」 うまく言えなかったけど、おれにはこれがいっぱいいっぱいだった。(キンチョーしまくって、お兄ちゃんにうまく話しかけられなかったからだ。) でもお兄ちゃんはそんなおれをばかにすることなく、また少しだけ笑ってみせて、おれに「いっしょに、あそぼう?」と言って手をさしのべてくれた。 おれはお兄ちゃんのそんな言葉と手に、どうしようもなく嬉しくて、胸がぎゅううってなって、なんか跳び跳ねたくなったけど、そんなことしたらヘンなやつだってお兄ちゃんから思われそうだから、おれはどうにか自分の気持ちを抑え込んで、お兄ちゃんから差し出された手を握った。 お兄ちゃんの手はおれの手よりもずっと大きくて、あたたかかった。 そして、お兄ちゃんに触れたのが嬉しくて、また胸がぎゅううってなった。 ―――――お兄ちゃんと手を繋ぎながら歩いていると、お兄ちゃんに引っ付いていたやつが目に入った。そう言えばこの…黒いのはお兄ちゃんの妹らしいけど、この黒いのの顔はまだ見ていない。 おれはお兄ちゃんがいればいいからどうでもいいんだけど、お兄ちゃんにへばりついてるやつはおれのことにボンヤリとしか気付いてないらしく(まぁ、見えてないもんな)、いきなり喋りだしていきなり動きだしたお兄ちゃんにびっくりしているのか、首をかしげていた。 そしてお兄ちゃんはそんな"黒いの"に気づいて、おれのことを「ミカサの友だちだよ」と言ってセツメイしていたけど、おれは意味がわからなかった。 「("ともだち"ィ?、おれ、その黒いのよりもお兄ちゃんとともだちになりたいのに。…お兄ちゃんはヘンな事言うんだなぁ。)」 そんな事思いながらも、お兄ちゃんに手を引かれるままに、おれはお兄ちゃんについていった。 ――――――――― ショタ時代からズバズバものを言う(考えている)エレン・イェーガー。 て言うかヤンデレくさい。 |