散々たる結果だった。ポルポの命令でカジノに行けば、なんのことはない、ただの接待だった。高そうな酒と高そうな女に囲まれた男たちの相手を適当に済ませ、少しやってみるかと十ユーロ紙幣をコインに替えたのがはじまりだ。
 そもそもギャンブルになんて興味はなかったが、これが終わってしまえばまたあの場所に戻らなくてはならない。実に自分らしくない判断だったとは思うが、俺は瞬く間に消えたコインを、今度は二十ユーロ分購入した。

「それが、この様か」

 パーティーがしまいになるころには、財布の中はすっかり空になっていた。家に帰ればいくらかはあるとはいえ、本当に、らしくない失態だ。
 仲間には見せられない姿だな、と眉をひそめる。
 家まで送るというタクシーを断って、明け方のネオポリスの街を歩く。朝靄のサーモンピンクの空に建物が輪郭をやわらげていた。無償に、あの少女に会いたくなる。この色によく似た薔薇の花は、きっと彼女に似合うだろう。
 そう思うだけで、ささくれた心が少しだけ凪いでいく。

 その瞬間だ。まるで神が願いを聞き届けたように、背広の内ポケットの中で携帯が震え出した。まさかな、と思いながらも、静かに振動を続ける携帯を画面もよく見ずに耳に押し当てた。ほんの願掛けのようなものだ。

「プロント?」

「……ブチャラティ?」

 最後の最後で、ここ一番の勝負に勝った気分だった。甘い声が鼓膜をそっと撫でる。

「インビジブル、どうした。今朝は随分と早起きだな」

 口が自然と緩む。話さなくてもいいことまで、言葉にしてしまうほど。

「なにか必要なものが?生憎、いま持ち合わせがないからすぐにとはいかないが――」

「そうじゃないわ。ごめんなさい、起こしてしまったかしら」

 電話口の声が段々と小さくなる。

「ただ、急に……あなたの声が聞きたくなったの……」

 最後の方になると殆ど聞こえないほど、声は絞られたものになった。それでも、鼓動を一つ跳ねさせるのには十分で。

「声だけで、いいのか?」

 少しの沈黙。それから、小さく息を吸う音がして、

「会いたいわ」

「ああ、俺もだ」

 そうとだけ言って通話を切る。電話の向こうの彼女は目を丸くしているのだろうか。手土産一つない自分を受け入れてくれるだろうか。考えるだけで、足取りは三分前とは比べものもならないほど、軽くなっていった。







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鯖ちゃんにいただきました、散財ラティです!!WWWWW
ラティはお金すってもなんでこんなに素敵で可愛んでしょうか//////
朝っぱらから会いたがる恋人に甘く答えるラティ、朝っぱらからこんな会話が成り立つ関係の二人に、もう全てが萌えで息できない苦しい//////
鯖ちゃん……ありがとう、そしてありがとうヽ(;▽;)ノ
エリ、さばのおはなし、すっきぃーー!!(*>ω<*)


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