「…ソヨン、」

涙が溢れた。ぼろぼろと零れ落ちた涙が雨と一緒に流れていく。憎んでいた訳ではない。それでも少しは恨んでいた。他の男と恋に落ちた愛しい人の事を。激しく打ち付ける雨がこれは現実なのだと肌に訴えかけてくる。冷たさは感じなかった。ただひたすら痛かった。

(ソヨン、もう苦しくはないかい?)

いつも闘蛇を世話している彼女は苦しそうに笑っていた。今はその苦しみから解き放たれているのだろうか。そっちでは幸せにくらしているのだろうか。
後悔していないのはきっと自分に彼女を幸せにする自信がなかったからなのだ。情けないと思いながらもただ見ているだけだった。そして、今も。

気掛かりだった彼女の娘にも大したことはしてやれなかった。責められるのももっともだ。同じ色をしているはずなのにエリンの眼を見るのが怖くて、視線を外した。

(すまない)
(許してくれ、)

まだ幼いその少女はあまりにも母親に良く似ていて、唇が震えた。


傷みを探して一万里
(そのために)
(生きている)




title by リッタ





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