神と言うのはなんて残酷なのだろう。
しかしその神というものに身を捧げなくてはいけない皮肉な運命。
運命に翻弄されて惑わされ続ける人生にいつか終わりはくるのだろうか。



"私の言うとおりにしていればもう二度とあんな事にはならないだろう"

長官は私にそう言った。
従うしかなかった。夫を無くしたあの哀しみを、絶望を、二度と味わいたくは無かったから。しかし私はすぐにそれを後悔することになった。





「―…あ、」

椅子から立ち上がろうとした瞬間、立ちくらみによろめいた。たったそれだけの事でも、どうせ貴方は駆け寄ってくるのでしょう?

「大丈夫?ブリジット、」

細いくせに力強い腕が、大きな胸板が、彼は男なのだと再認識させる。優しく腰に添えられた手が大きくて胸が高鳴る。


「大丈夫、ですから室長。」
「でも…」
「大丈夫です。」


思った以上に冷たい声が出て、自分が一番驚く。彼の哀しそうな瞳に胸が痛む。

(それでも、)

好きになってはいけない。
愛してはいけない。
そう言い聞かせて室長から距離をおく。室長は淋しそうに笑っていた。



「…ごめんね。」


(そうして、私は)
彼の口がそう告げる前に扉を閉めた。

(自分の気持ちに。)




(傷跡が、いたい)


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ブリジットが未亡人だったら、という妄想です。




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