※パロです



太いイバラで閉ざされた城にその国の姫は眠っていた。彼女に掛けられた呪いをとく方法はただひとつ。イバラを取り囲む龍を倒し、彼女の眠る城の最上階までたどり着きその唇に口付けをすることだった。


小さな頃、一度目にした姫君に僕は恋をしました。彼女は気が強く、不思議な力を持っていたため魔法使いに目をつけられ、呪いを掛けられたと聞きました。
それから僕は、来る日も、来る日も、彼女を助ける為に剣術の腕を磨き、馬に乗ることを覚えながら毎日を過ごして来ました。人生の半分その鍛練で使ったとしても構わないと思っていました。とにかく、ただ僕は、彼女を助けたかったのです。

そして今、僕は彼女の眠る城の最上階にやって来ました。もはや片腕の感覚はなく、血を流しすぎたせいか、頭がぼーっとしています。それでも城の石段をひとつふたつと上っていき、彼女の寝顔が見えた時には涙が出ました。

僕はひたすらこの瞬間を待っていたのです。
茶色がかった柔らかい髪と、薄紅色の唇がまるで人形のように美しく、僕は思わず彼女に見とれました。


「さあ…起きてください、涼宮さん」

そっと彼女の唇に自分のそれを重ねました。




しかし、彼女は目を開けませんでした。そうしてやっと気がついたのです。

(涼宮さんは僕のキスでは目覚めない…)


涼宮さんの求める人物は決して僕などではありませんでした。それがたった今分かったのです。なんと愚かでおこがましい事でしょう。僕のような存在が彼女の呪いをとくことなど到底無理な話だったのです。

「ああ、涼宮さん」
「こんなことを願う事さえ許されないかもしれないですが…」



「どうかお幸せに、」


僕はまっ逆さまに落ちて行きました。それからどうなったのかは僕にもわかりません。ただ、彼女は彼と幸せに暮らしたのでした。




(騎士の夢)

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片想いの古泉が大好きです。


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