・春の大大大感謝祭の朗読劇?かぐや姫のパロです。
・元ネタを知らないとなんとなーくただの夫婦ものっぽいかもです。
・ほんの少しだけいかがわしい要素を含みますのでご注意ください。




佐藤くんと私、結婚してこの田舎で暮らし始めて随分経つけれど、やっぱり子どもが出来ないのは私のせいだろうと思う。佐藤くんは何も言わないけれど、きっと子どもが欲しいと思ってる。結婚したての頃真面目な顔で「お前の子ならきっと可愛いだろうな」って優しく言ってくれたもの。このまま佐藤くんは私と夫婦で居ていいのかしら。佐藤くんの子孫を作れない私でいいのかしら。そんな、佐藤くんに言ったら怒られそうなことばかり、毎日考えていた。

だから、葵ちゃんを連れて帰って来た時は驚いた。かぐや姫です!と自信満々の顔で笑う葵ちゃんを佐藤くんはため息をつきながら見ていた。きっと佐藤くんに無理矢理ついて来ちゃったのだと思うけど、子どものいない私たちには子どもみたいな存在になった。

「おい八千代」

その夜葵ちゃんを寝かしつけた後、佐藤くんは私を呼んだ。いつも私たちは隣に引いた布団で眠っている。だから引いた布団の上に「座れ」と佐藤くんは告げた。

「…悪かったな」
「え…?」
「勝手に…食い扶持増やしちまって…」
「そ、そんな!いいのよ、私、子どもが出来たみたいで嬉しくて…」

佐藤くんの顔が曇ってしまった。ああ、私自分でドジを踏んだ。子どもの事に自分から触れてしまった。馬鹿ねえ私。
佐藤くんはいつだってあんなに優しく私を抱いてくれるのに、私はそれに応えられない。佐藤くんもきっとうんざりしてるわ。しゅんと下を向くと八千代、と名前を呼ばれた。

「お前…子どもが出来ないのは自分のせいだとか思ってんのか?」
「え…っ」
「馬鹿なこと言うな」
「でも…佐藤く…」
「お前が悪いわけ、ないだろ…っ」

ぎゅうっと抱き寄せられて頭が回らない。結婚してから随分経つのに、未だにこういうことに慣れない私を佐藤くんは笑うだろうか。こっそり表情を伺ったら、佐藤くんも顔が真っ赤っかだった。

「医者じゃねーから何が悪いとか、そういうのはわかんねーけど、とにかく、お前が気にすることなんかないんだ」
「……ううっ…」

佐藤くんは私の不安をゆっくり溶かしてくれた。真剣な鋭い目がこちらを見てる。涙でぼやける視界で必死に佐藤くんを捉えたら、ぎゅっとまた抱き寄せられた。
葵ちゃんに感謝しなくちゃ、そう考えていたらぱたんとお布団に倒された。あら、と目を上げる。大きな大きなお月様が出ていた。



title:リラン




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