野ばらが帰って来ていない。家に帰って一番にその報せを受けた連勝は身を凍り付かせた。もう外は暮れ始めている。先祖返りたちにとっては危ない時間なのだ。買い物に行くといったきり帰って来ていないらしい。連勝の頭の中には嫌な予感しか浮かばなかった。あの日、野ばらは帰って来なかったじゃないか。
連勝は家を飛び出した。無事で居てくれと一心に祈りながら走った。

「反ノ塚?」

近くの公園に差し掛かった辺りで名前を呼ばれ、連勝は立ち止まった。野ばらだ。学生服のままの野ばらが不思議そうに連勝を見つめていた。

「反ノ塚、今…」
「どこ行ってたんだ!」
「え、?」
「こんな遅くまで!心配させて!」

あ、と何か言おうとしたまま野ばらは固まっている。反ノ塚は勢いよく野ばらを抱きしめた。全身を抱きしめてもまだ余る、小さな身体。野ばらの握りしめていた袋は地面に落ちて形を崩していた。

「あ、ケーキ」
「ケーキ?」
「今日、あんたの誕生日じゃない!」

泣きそうな声で野ばらが言った。野ばらは自分のためにケーキを買いに行ってくれたのだと連勝はやっと理解した。自分の誕生日などすっかり忘れていた。

「ぐちゃぐちゃになったかしら…」
「いいよ」
「良くなんか…」
「俺なんかのためにケーキ買って来てくれなくたって、俺は野ばらが居れば」

わざわざケーキを買いに行ったのに、と今の連勝に食い下がるほど野ばらも子どもでは無かった。連勝は何よりも自分を心配してくれたのだ。転生する前の自分たちに何が起こったのか野ばらは知っていた。

「ごめんなさい」
「…うん」
「誕生日、おめでとう、反ノ塚」
「…ありがとお、野ばらちゃん」

それから二人は帰って潰れてしまったケーキを食べた。形は変わっていたが、味は涙が出るほど美味しかった。

(君がいない地球で幸せになんてなりたくない)

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連勝ハピバ!彼にはとても幸せになって欲しいです…!




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