先ほどから完全に机に伏してしまったコムイにブリジットはため息をついた。コムイが仕事をしないのは今に始まった事ではない。ジメジメとした空気の中でコムイの周りだけ更に湿度が高いような気さえした。

「ねえ、ブリジット〜」
「はい、なんです」
「リナリーはさあ、そのうちお嫁に行っちゃうんだよね」
「ええ…」
「はああ…」

コムイはべたりと机に頬付けた。
確かに最近リナリーはこの司令室に訪れておらず、コムイと顔を合わせる事は極端に減ったように思う。しかし、それが、どうしようも無い事だと言う事くらいコムイも理解していた。戦争なのだ、今は。コムイが毎日毎日、妹が無事かと確認をとり密かに安堵しているのをブリジットは知っている。室長として一度皆の前に出ればそんな私的な心配事は口に出せない。それをコムイは誰よりもよく分かっていた。

「室長」
「うん?」
「もう12時ですね」
「え、ああ…ごめん、もう寝ていいよ、ブリジット…」
「お誕生日おめでとうございます、室長」
「…へ?」

全く予想もしていなかった言葉にコムイは目を丸くする。どうやら自分の誕生日などすっかり忘れていたようだ。ブリジットはそんなコムイに構わず続ける。

「今年は私も多忙でしたので、何もご用意できませんでしたわ」
「…そんな、良いよ」
「申し訳ありません」
「あ、あのさ…ブリジット」

コムイは恐る恐る言った。はい?と鋭いブリジットの返答が飛ぶ。

「もし、良かったら、今だけ名前で呼んでよ、室長じゃなくてさ」
「……」
「…っ、なんて、ごめん、こんな年で何言ってんだって、感じだよね…はは」

ブリジットはまっすぐコムイを見つめていた。その瞳にコムイはごくりと唾を飲み込んだ。

「コムイ室長」
「…っ、」
「リナリーはお嫁に行く日が来るでしょう。けれど、私はいつまでも貴方のお側に居りますわ」

戦争が終わっても、ずっと。例えあなたが一人になってしまっても淋しくないように。ブリジットはそっと、普段は見せないような顔で微笑んだ。

「最高のプレゼントだよ、ブリジット」
「それは光栄ですわ、コムイ室長」

例えば貴方の愛しい妹が貴方の元を発ってしまっても、私はずっと、ずっと。

(いつまでもあなたのものでいいです)
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コムイさんハピバ!いつも暗過ぎるのでちょっとラブラブしてもらいました。ブリジットの〜ですわ 口調が書けて満足。


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