二章反ばら


小さな楓程の手が俺の手を握る。それは案外強い力で先祖返りの記憶を思い出させた。さわさわと五月の風がレースのカーテンを揺らす。窓から射す光の眩しさに俺は思わず目を細めた。
また、俺たちは出逢ってしまった。遅かれ早かれ俺と野ばらは巡り合うのだろうけれど、指を握る手は余りにも小さくてどうしたって苦しくなる。もうあいつに出逢わなければ、俺があいつを見つけなければ、悲惨な運命を繰り返さなくても済むはずなのにその一方で早く野ばらに逢いたいとも思う。

(どうすりゃ良いんだよ…まったく)

できるならあんな悲劇をもう繰り返したくはない。野ばらの帰ってくることの無かったあの夜を考えると息ができなくなりそうだった。それでも俺たちは何度でも生き直す。死さえも2人を分かてない。
小さなベッドの中で無邪気に野ばらが笑った。

「このままで居てよ、野ばらちゃん」

このまま俺の腕にすっぽり収まるくらい小さくて、俺を守るなんてことできないまま。俺が守ってあげなきゃいけないくらい非力で居て。きっとそんなこと言ったらあいつは怒るだろうけど。

「頼むよ、野ばら…」

頬にそうっと口付けると小さな野ばらはまたきゃっきゃと笑った。


(それでも生きた)

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キスの日反ばら。
暗いのしか書けなくてすみません…



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