シルヴィア と太陽みたいに暖かい声で私を呼ぶあいつの声を覚えている。この大地の奥底に沈んでしまったあいつはとにかく乱暴で、野蛮で最初はだいっきらいだった。でもあいつは私を愛してくれて、守ってくれた。それが祖先の宿世だとしても私を大切にしてくれた。そして私もあいつを好きになった。その直後の悲劇、というかそれ故の悲劇。
あいつが居なくなってから私の周りは静かになった。皆私を腫れ物の様に扱った。唯一の肉親も、恋人も失った私を。麗花だけが普通に私に接してくれた。お兄さまを失った事を悲しみ、泣いた。私も一緒に泣いた。
だからずっとずっと、私は泣きっぱなしだ。あいつを思って泣くばっかりだ。
「ばか…アポロのばか」
「……」
「嫌い、もうあんたなんかの為に泣くのは嫌よ」
「それは、困る」
「…え?」
窓枠に足を掛けたアポロが眉を下げて私を見下ろしていた。赤い髪は伸び放題だったけど私には分かる。これはアポロだ。
「嫌いとか、言うな」
「…なんで……」
「なんでって…帰って来た」
「ホントに?」
「ホントに」
「…アポロ」
「なんだよ」
「アポロぉ〜」
「うわっ」
抱きついたらバランスを崩してアポロは床に落ちてしまった。それでもアポロは私の背中をぽんぽんと叩いて優しく笑う。恨み言も悪口もたくさん言ってしまいたいのに、涙しか出てこない。やっぱり私はアポロが好きなんだ。
「シルヴィア」
「…うん?」
「長い間一人にしてごめんな」
「…うん」
「愛してる」
「私もよ、アポロ」
(この夜に二人やわらかく溶かして)
----------------
アクエリオンEVOL ってこんな感じかと思ってました。
title:すなお