ちょっとずつ、服の趣味が変わってゆく。それは私だけじゃなくネウロも同じみたいだった。私が制服を着られなくなって今までの服が着られなくなっていくうちにネウロも落ち着いた色の服を好んで着るようになった。もともとおしゃれな気があったし、当たり前なのかもしれないけどそれはまるでネウロがちょっとずつ人間になってくみたいで嬉しかった。

今日はネウロが朝早くから私を連れ出した。行き先は聞いてない。寝ていたらいきなり布団の上からお腹に乗っかられて、「貴様の出来うる最高ランクで着飾れ」とか言われて何となくお気に入りの服を着てネウロに付いてきた。ネウロはストライプのワイシャツにおしゃれな柄のネクタイをしてちょっとラフなジャケットを着てる。その上にロングコート。やっぱり、変わった。昔のネウロとは違う。

初めてネウロと一緒に映画を見た。私が前に観たいってぽろっと言った映画だった。覚えてたんだ。隣のネウロはさぞかし詰まらないのか、寝るのを必死で我慢してるみたいだった。それからデパートとか本屋とかを見てカフェに入って新作の限定ケーキを食べて。何だか嘘みたいに普通の日をネウロと過ごしている気がした。最後にネウロが連れていってくれたのはすっごい高いビルの一番上にあるレストラン。緊張し過ぎてレストランに着いてすぐトイレに来てしまった。

(…これじゃあまるでデートみたい)

映画に行ってショッピングしてカフェに行ってレストラン。いかにもドラマとかに出てきそうな、デートプラン。でもそれをネウロがやるというのだからびっくりだ。
席に戻るとネウロは窓の外を眺めていた。ごめんね、と軽く言って席につくとネウロはこちらに向き直る。

「ヤコ」
「…うん?」
「誕生日、おめでとう」
「ええ?」
「今日は貴様の誕生日だろう」
「そう、だけど」

そうだけど、すっかり忘れていた。
ネウロは満足そうに頷いて大きな包みを私に渡した。朝からずっと大きい紙袋を持っているなと思っていたけどまさか、プレゼントだったなんて。
リボンをほどいて開けてみると白地に大きなお花をあしらったワンピースが入っていた。デザインもすごく可愛いし、サイズもぴったりだった。

「ありがとう…ネウロ」
「気に入ったか」
「うん、すごく…!」

何だかネウロは幸せそうだった。シックスと闘った後みたいな顔をしていた。こんな風に優しく笑ってくれるネウロを最近になって見るようになった。今までみたいにドSだけど私を大切にしてくれてる。だから私も幸せだった。

「ヤコ、貴様は多分我輩より先にこの世から居なくなる」
「……うん」
「そんなことは我輩も分かっている。貴様が居なくなったら笹塚どころではない喪失感なのだろう」
「ネウロ」
「ヤコ。忘れるな。死んでも忘れなければ貴様はまた少し進化できる。我輩は決して貴様を忘れない。今この瞬間を、貴様に与えた服を、貴様と過ごした全ての時間を」
「…ネウロ…」
「我輩は……、ヤコ…?」

「忘れ、ない…よ…っ…!」
「…泣くな」
「だって、ネウロが…死ぬとか居なくなるとか…!」
「…悪かった」
「もう…っ」
「泣いてくれるな、今日は貴様の、そして我輩の誕生日なのだから」
「え?…ネウロの…?」
「ああ」

ネウロの誕生日。ネウロが生まれてから何年という時を経て私が生まれた。そんな、不思議な巡り合わせで私たちは今こうして一緒に居る。

「ネウロ」
「なんだ」
「おめでとう」
「…ああ」
「忘れないよネウロのこと。ずっと忘れない」

「ああ」


満足そうにネウロが笑うから私も嬉しくなった。ネウロは一体どんな顔してこのワンピースを買ったんだろう。それを考えていたらまた泣きそうになった。こうやってちょっとずつ、本当に少しずつ私がネウロに、ネウロが私に近づいて行けたら良いな。そうして私が死んでもネウロの中で生きていられたら幸せだなと思った。


(君と、生きる)

----------------
ネウロ&弥子誕生日おめでとう!!
ずっとずっと、ネウヤコが大好きだし、この先もときどき二人を思い出して幸せな気持ちになると思います。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -