10号ネタバレ有り


あいつの考えていることは分からない。本当に読めない不愉快な男。いつも仮面みたいな笑顔を貼り付けて、決してホントの顔を見せようとはしないんだ。
だから、驚いた。会長選挙を攻略したとき私の「お願い」を聞き届けたことに、あいつが笑顔を消したことに。

「チードルさん」
「…なによ」
「どうぞ」
「……」

振り返ると少し屈んだパリストンが私にコップを差し出していた。湯気のたつコップの中からコーヒーの良い香りがする。ぎっと睨むとパリストンは困ったような顔をした。

「あなたがあんなこと言うとは思わなかったわよ」
「あんなこと?」
「信じるだの、よ」
「…そうですか?」

未だに笑顔が戻ってこないパリストンはひどく弱々しく見える。してやられて、悔しくて不覚にも泣いてしまった時パリストンは興を削がれたような顔をしてた。何故だかは分からないけれど。
コーヒーを受け取って口を付けると口のなかに苦味がふわっと広がった。

「あなたの事だって信じていますよ、チードルさん」
「…は…?」
「あなたは本当に、魅力的ですからね」

ふざけたような声色に、空のコーヒーのカップを投げ付けてやる。まったく何だってそんな馬鹿みたいな事を言ってくるのかしら、本当に信じられない。
けれどどこかにパリストンの「信じていますよ」を喜んでいる自分が居た。


(domino)

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倒れ始めたらそこから一気ですよ。

title:ごめんねママ




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