「…ダリアン、…ダリアン?」
「……ん」
「大丈夫かい?ぼうっとしていたよ?」
「…昔の夢を見ていたのです」
「昔の夢?」
「是。お前が生まれるずっと前の話なのです…」

そうしてダリアンは遠くを見つめた。かつてまだ小さかったヒューイが出会った時のように、ダリアンは常に孤独であった。鍵守たちの寿命は彼女に遠く及ばず、果ててしまう。次々に去って行く鍵守を彼女はどんな気持ちで見送って来たのだろうか。

「私はきっとまた一人になるのです」
「…君らしくないな、弱音なんて」
「私にだって感傷的になることくらいあるのです!お前みたいな木偶の坊と一緒にするなーなのです!」
「ごめんごめん」

彼女はこうして弱さを隠して生きてきたんだろうか。そう思えば苦しくて、ヒューイは顔をしかめた。広いダンタリアンの書架の中に一人座り込む少女。その姿が鮮明に蘇ってくる。結局自分は彼女を外へ連れ出せてなどいないのだ。

「…すまない、ダリアン」
「否、私はお前に謝罪など求めていないのです」
「そうだな…でも、僕は…」
「でも、お前はそう簡単に死ぬ奴では無いのです」
「…え?」
「簡単にのたれ死んだらこの私が許さないのです!」
「ああ」

黒の読み姫、九十万と六百六十六の幻書を封印せし、迷宮の書架、壺中の天。開いてみれば寂しがりの少女。自分はそんな彼女を守る鍵守なのだ。

「僕だってそう簡単に死ぬつもりはないさ。少なくともじいさんより長く側にいる」
「是。これは約束なのです」
「約束だ。」

いつか自分はダリアンをまた一人にするだろう。それでもちゃんと、その期間を乗り越えられるくらいには彼女の孤独を癒してやりたいのだ。ヒューイはそっとダリアンの小さな手を握った。



(僕らどうやって永遠になろう)

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ヒューイはダリアンにとって特別だと良いなあと思います。

title:ごめんねママ



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