ぽん、と陽気な音を立てて上空にメフィストが現れた。にやりと独特の笑みを浮かべてこちらを見つめてくる悪魔にシュラは眉を吊り上げる。出たな、タヌキジジイとでも言いたそうに彼女は上空を睨み付けていた。ピンク色のパラソルを広げ、メフィストは地面に降り立った。そしてわざとらしく「偶然ですねえシュラ」と笑う。何が偶然か。

「偶然なもんか」
「"偶然"散歩がしたくなって"偶然"ここへ出てきてみたら"偶然"あなたに会いました」
「そういうのを必然と言うんだ!」
「おやあ?何か怒ってます?」

普段飄々としている方のシュラもメフィストの前ではいつも用心していた。この男は本当に何を考えているのか分からない。しかも本気になればいくらでも異端分子になり得る存在なのだ。警戒しておくに越したことはない。メフィストはつかつかとシュラに歩み寄ると彼女の顔をじっと見つめた。

「何だよ」
「肌が荒れていますね、何かストレスでも?」
「ストレスの原因として真っ先に思い浮かぶのはお前だ」
「なんと!」

なるほど、私ですかとメフィストは陽気に言う。その態度がまた苛ついた。長身のメフィストがシュラの隣に立つと随分身長差があるため、彼女の顔を覗き込むにはだいぶ屈まなくてはならない。顔を近付けたせいか、メフィストはあることに気が付いた。今までとぼけたような表情をしていたのが急に険しい顔になる。

「………」
「メフィスト…?」
「あの男に会いましたか?」
「…あの男?」

「あのイカレた聖騎士ですよ」

メフィストの言葉が怒りの含んだものになる。現聖騎士、アーサー・オーギュスト・エンジェルはシュラの上司である。会ったかと聞かれれば否定することもない。正直に頷けば、メフィストは更に眉間にしわを寄せた。

「奴の悪趣味な香水のにおいがします」
「…そうか?」
「ええ。まったく…臭くてかなわない」
「…お前そんなにあいつを毛嫌してたか?」
「そりゃあもう。」

シュラにちょっかい出すものだから、と言ったメフィストの言葉は彼女には聞こえていなかったらしい。シュラは終始不思議そうにしていた。


「あの男…気に食わん」

チッと舌打ちをしたメフィストは空に向かってそう呟いた。


(その匂いを消したい)

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メフィシュラ…有りじゃないかな!と思う今日この頃です。アーサーはクールな顔して独占欲の強いただのドS。メフィ→シュラ←アサで(笑)




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