僕の全ては涼宮さんのモノだった。彼女の意識は僕の意識であり、彼女の意思は僕の意思であった。彼女の傍で忠誠を誓い続ける僕が異端分子になることは許されない。健全な高校生男子ともなれば特別な異性に思いを寄せ身を焦がす事など通過儀礼と言っても過言ではない。しかし僕にはそれすら許されせなかったのだ。誰か他の女性を好きになろうと思ったことはない。ずっと、例外なく、僕は彼女が好きだった。無理難題を押し付けられようとも、不当な扱いを受けようとも。

「古泉くん」
「…はい?」
「もう帰る?」
「…ええ」

本来この役割を受け持つはずの"彼"は急用だかで直帰していた。少し前ならそれだけで閉鎖空間を生んでいた彼女も最近では抑え込む事を覚えたらしい。健気に意識を沈めようとする努力が何とも言えずいじらしかった。特に考えもせず普段の笑顔で「帰りますが」と答えれば、彼女はふんふんと頷いた。

「別に一人で帰るのが嫌いと言う訳じゃないんだけどね、今日は誰かと帰りたい気分なのよ」
「それでは僕が家までお送りしますよ、涼宮さん」

そう言っただけで彼女は満面の笑みを浮かべてくれる。さすが古泉くん、やっぱり副団長になるべくしてなった器ね。お褒めに預かり光栄です。良いのよ、団員を褒め称えるのも団長の務めだからね。
他愛の無い話をしながら下る通称「心臓破りの坂」はいつも以上に短く、なだらかに感じられた。

例えば世界が何度繰り返そうと、消失しようと、分裂しようと、僕の密かな恋情は彼女に届かない。こんなに近くに居ようともこの距離を越えられないのだ。そうだとしても、

「涼宮さん」
「なに?」
「僕は一生貴方についていきますよ」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」
「例え誰も居なくなったとしても、世界が敵になったとしても、お側に置いてくださいね」
「もちろんよ!こんなに優秀な人材なかなかいないからね!」
「フフ、ありがとうございます」


愛を囁く王子にはなれないけれど、忠誠を誓う騎士になれるのなら、それで良いかと思い始めている。


(うつくしいきみの宇宙)

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驚愕を読んだら古ハルが書きたくなって。エンドレスだろうと消失だろうと分裂だろうとハルヒが好きな古泉が好きです。


title:ごめんねママ



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