「…あ?なんで寝てんだ?」
リンが眠りに落ちて半ば無理矢理覚醒したグリードは不機嫌そうに頭をかいた。都合の良いときだけ乗っ取りやがって、とグリードは悪態をつく。すると隣で小さな寝息が聞こえた。見れば、ランファンが幸せそうに眠っている。
(ハッ…リンだと思って油断したな)
リンが寝ちまえばこっちのもんだ!グリードはにやりと笑った。
「くしゅっ」
(うわっ!?)
突然のくしゃみに驚いてグリードの余裕はどこかへ吹っ飛んでしまった。
(ったく…起きたかと思ったじゃねーか。)
自分の着ていた(正確にはリンの)黒い上着をランファンにそっとかけてやる。疲れているのか無防備なのかランファンは起きる気配が無かった。
「わ、か…」
「…グリード、だっつの」
夢の中で無意識に呼ばれた名前は自分のものではなくて、グリードは紅色の瞳を微かに震わせた。こいつの中でこの身体はリン以外の何者でもないのだろう。
「…ランファン」
小さく発せられた言葉は風に流されて聞こえなくなってしまった。
(その、少女)
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グリードの片想い大変美味しいです…!