*サヨナラノツバサネタバレ有り
バジュラたちとの戦いから1年後。救助を諦めなかったSMSの尽力もあり、アルトくんは無事フロンティアに帰還した。対面して真っ先にシェリルさんの話をしたらアルトくんはすぐにシェリルさんの所へ行ってくれた。シェリルさんはあの日からずっと眠り続けている。まるで王子さまを待つ眠り姫みたいに。
「ありがとうなランカ」
「アルト、くん?」
「俺がいない間、シェリルを守ってくれてありがとう」
もう1年前にフラレたのに、改めてアルトくんはシェリルさんが好きなんだなと思った。1年経ってもアルトくんを好きな気持ちは変わらないけれど、だけどきっとアルトくんのお姫さまは最初からシェリルさんなんだ。
「ランカ、ちゃん…アルト?」
「シェリルさ…」
「シェリル!」
カプセルの中のシェリルさんが目を開けた。長い睫毛が震えて滴が溢れる。アルトくんも眉を下げて笑っていた。
私はそっと後ずさりして病室を出た。鼻の奥がツンとして、走って家へかえった。
「お帰りランカ」
「聞いて!お兄ちゃん!シェリルさんが目を覚ましたの!」
「本当か!?」
お兄ちゃんもぱっと顔を明るくした。それ見たら視界がじんわり歪んで曇った。抑えていた涙がぼろぼろと溢れてそれを隠したくてお兄ちゃんの胸元にしがみついた。お兄ちゃんはなんにも言わずに私を抱き締めてくれた。
「お兄ちゃーん」
「なんだ」
「私、後悔してないんだよ、アルトくん好きになったの」
「分かってるよ」
「でも、でもね、」
「俺の可愛い妹をフるなんてあいつも見る目無いな」
「うん、」
お兄ちゃんはおっきな手でぽんぽんと頭を撫でてくれた。それが温かくて優しくて余計に涙が出る。
「あのね、お兄ちゃん、私パインケーキが食べたい!」
「お、任せろ俺が作って…」
「ううん、違うの」
「え?」
「キャシーさんのがね、食べたいの。」
「…ランカ。」
お兄ちゃんが電話をしたらキャシーさんはすぐに来てくれて、パインケーキを作ってくれた。綺麗で美味しいパインケーキは初めて食べたはずなのに懐かしい味がした。
(踊らぬシンデレラ)