*サヨナラノツバサネタバレ有り
こんなに無惨な姿になって、もう意識など絶ってしまえば楽なのにと思えた。全て無くしてしまえば楽になる。あの娘のことも忘れて、消えてしまえば…そう思った。あの娘は出会った頃のシェリルとは違う。もう、一人でも大丈夫。強く立っていられる。一人で歌って一人で生きて誰かを愛していける。だから平気。自分に言い聞かせる度胸の辺りが痛んで、インプラントに成り果てたこの身体に何が残っているのだ、と思う。何の未練が残っているというの。
(シェリル、シェリル)
暗い場所を抜け出して、地上に出た。ああ、こんなはしたない格好で情けないわ。作り物の空は紅く染まっていて綺麗だった。こんなの毎日あの娘と見てきたはずなのにこんなに綺麗なのは、なぜ?
「グレイス…!」
視界にピンク色の髪が映った。シェリル、シェリルなの?ああそれとも夢なのかしら。あの娘を騙して利用したりしたから罰をくらったの?
「ああ…グレイス、グレイス!」
「…シェリ…ル?」
「グレイス!」
ぎゅう、と抱き寄せられて、少し苦しくてでも温かくて、涙が出た。あなた、私がしたことを分かって無いの?私はあなたにこんなことをされる資格は無いのよ。唾を吐かれて足蹴にされたって文句は言えないのよ。
「グレイス…」
「シェリル、歌って…」
「…え、?」
「あなたは歌って、 生きて。」
どうして泣きそうな顔してるの。あなたはいつだって不敵に笑って楽しそうに歌っていれば良いの。だからそんな顔、しないでちょうだい。
「グレイス、わたし…歌うわ。あなたの為に、歌う」
私は多分予想してたよりずっとあなたを大切に思っていたのね。例えば本当の娘じゃなくたって、あなたは
(大切なわたしの、子)
空から降り注ぐ切ないメロディは私に不似合いな優しいレクイエムだった。
(想いを届ける)
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劇場版のグレイス、すごく好きです。