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開幕
<大部屋に集まった10人の男女。たった扉は二つとも閉まっていて、皆、丸い卓を囲むように座っていた。ベルが鳴り響き、スピーカーから声が聞こえてくる>
01.進行人
「キミニムラ村の皆さん、おはようございます。私の屋敷にようこそいらっしゃいました。貴方達にはこれから、予定通り、村に紛れ込んだ人狼を見つけ出す為の話し合いをしてもらいます」
02.進行人
「話し合いは勝敗がつくまで毎日繰り返されます。その間、この屋敷から出る事は出来ません。人狼を全滅させれば村人の勝利。この村には再び平和が訪れるでしょう」
03.進行人
「しかし、生存している人狼の数と村人の数が同数以下になった時、残念ながらこの村は滅び、人狼の勝利となってしまいます。そうならない為にも、村人の皆さんは話し合い、推理し、人狼を見つけ出してください」
04.進行人
「協議終了後には毎回投票を行います。ブザーが鳴ったら、皆さんはお手元のボードに人狼だと思う人物の名前を書いてください。その投票で一番票を集めた方は……処刑となります」
<ざわつく場内>
05.進行人
「皆さんの知勇でこの村が救われますように。…どうか、あの少年の無念を晴らしてください」
<ブツッと切れるスピーカーからの声。緊張感走る場内、短い沈黙>
06.ビアンカ
「…あの少年の遺言が真実なら、この十人の中に、二匹の化け物が混じっている事になるな」
07.アイズ
「占い師は既に昨夜一人を占ってるんでしょ?出ちゃえば?」
08.ムッティ
「こ、こんな状況で、そんな簡単に出てきてくれるでしょうか…」
<不安げなムッティ。そのムッティの言葉を遮るように、ロッドがテンション高めにカミングアウトする>
09.ロッド
「はーい!オレ、占い師でっす☆ムッティちゃん占い、結果は白。こんな可愛い子が人狼なわけがないっ。はああああん、女の子可愛いよおおおお!ムッティちゃんたまんねーよおおお!!」
10.リズ
「うわ、ロッドきんもー。占い師は信用が大事なんだから、もうちょっと真面目にすれば〜?」
11.シャイン
「ふふ。申し訳ありませんが、私も占い師カミングアウトさせて頂きますね。ムッティさん占い、結果は白でした」
12.タオ
「ムッティ真っ白だな。問題は、どっちが騙りなのかって事だが…」
13.ムッティ
「あの、始まって早々申し訳ないんですが…白とか騙りって、どういう意味ですか?」
14.カンナ
「白とは潔白。この場合、白を貰った方は村人か狂人であって、人狼ではないと言う事になります。騙りとは嘘をつく事。つまり、人狼か狂人かが能力を偽ってカミングアウトする事ですわ」
15.アイズ
「占い師二人は把握。で、霊能者は誰?」
<名乗り出る者はなかなかおらず>
16.アイズ
「……もしかして、あの少年が霊能者だったーなんてオチはないよね?」
17.リズ
「んー。それは有り得ない…とは言い切れないけど、そうなると厄介だよね」
18.ジキル
「あ、あの……すみません、俺が霊能者です」
(おずおずと)
19.リズ
「あ、いた。じゃあ、占い師が二人と、霊能者が一人だね。把握把握ー」
20.タオ
「霊能者は本物として、占い師のどちらかは狂人か狼だよなぁ」
21.ビアンカ
「いや、霊能者は出るのが遅すぎだろう。まだ本物かどうかは分からんぞ」
22.カンナ
「私は一応本物だと思っておきますわ。占い師は…人狼より狂人の騙りの方が強めだと思いますが、最悪、どちらも偽物で、人狼と狂人の可能性もあると考慮しておきます」
23.キラ
「ロッドは変態発言目立つけど、それだけで本物かどうかの判断は出来ないし、まあ今後の占い先と考察を見て考えるよ」
24.ロッド
「変態臭いって酷いなあ。オレは全世界の女の子を愛してる、ラーメンツケメン僕イケメーンな紳士だよ。…ま、夜は別の意味で狼になっちゃうけどね」
<無駄にキラキラして下ネタを言うロッド無視して>
25.アイズ
「とりあえず今日は、何の手掛かりもないグレーゾーンの連中を投票先に選べばいいんじゃない?」
26.ムッティ
「グレー…ゾーン?」
27.リズ
「まだ占ってもらってない人や能力をカミングアウトしてない、情報がポヤヤーンとしてる人達の事だよ。今んとこ、ムッティちゃんとシャインちゃんとロッド以外は全員グレーゾーンだから、投票はこの三人以外にしましょーって意味」
28.ムッティ
「で、でも、一番票を貰った人は、死んじゃうんですよね?」
29.キラ
「そういうルールだからね」
30.ムッティ
「ルールって…そんな、ゲームみたいな言い方しなくても…」
31.アイズ
「別にいいじゃん。あんたは占われて白貰いなんだから、今選ばれる事はないし……これもこの村の為だよ」
32.シャイン
「自分の命より、村の命優先ですよね〜」
33.ムッティ
「っ……」
<みんな村の為に自分を犠牲にしようとしているが、村よりも自分の命が大事なムッティ。恐怖と戸惑いに襲われる>
34.ビアンカ
「今日の投票はそれでいいが、明日からは占い師全員に白を貰って確定白になったムッティが、投票先を指定して進行したらどうだろうか」
35.カンナ
「霊能者が本物だと信じていないんですか?」
36.ビアンカ
「言っただろう。出るのが遅い、と。ジキルは信用に欠ける」
37.ジキル
「それについては本当に申し訳ないです…」
38.タオ
「ま、俺も確定白のムッティ進行がいいと思うぜ。霊能者進行よりは確実だろ」
39.リズ
「そう?あたしはジキル君霊能者って思ってるから、ジキル君進行でもいいけど。ムッティちゃんは、人狼に噛まれて死んじゃう可能性が高いじゃん」
40.ムッティ
「え?」
<ブザー音が鳴る>
41.進行人
「時間です。皆さん、お手元のボードに投票相手のお名前をお書きください」
<書く音>
42.進行人
「それでは、アイズさんから時計回りに投票先を開示してください」
43.アイズ
「タオ」
44.タオ
「カンナ」
45.シャイン
「カンナちゃん」
46.ジキル
「ア、アイズさん」
47.ロッド
「キラちゃん」
48.ムッティ
「ビアンカさん…」
49.キラ
「カンナ」
50.カンナ
「タオさん」
51.リズ
「カンナちゃん」
52.ビアンカ
「カンナ」
<銃声音。何処かから弾丸が飛び、カンナが撃ち殺される。ムッティだけが怖がっている>
53.ムッティ
「きゃああああ!!」
54.進行人
「協議の結果、五票獲得のカンナさんは処刑されました。皆さん、お疲れ様です。ご自分の部屋に戻り、明日の協議開始時間までごゆっくりお休みください」
<閉ざされていた片方の扉が開く。時間が経過し、夜。ムッティは布団の中で人狼に襲われないか震えていた>
55.ムッティ
「ひっく、ひっく…ぐすっ、ど、どうして私がこんな目にあわなきゃいけないの…!?」
<回想。協議終了後、リズの発言の意味を聞きに行くムッティ>
56.ムッティ
「リズちゃん!ちょ、ちょっといいかな」
57.リズ
「?なあにー?」
58.ムッティ
「あ、あの…さっき言ってたでしょ?私は人狼に噛まれる可能性が高いって。その……どうして、そう思ったのかな?」
59.リズ
「えー。そんなの、人狼視点で考えれば分かる事だよ」
60.ムッティ
「人狼視点…?」
61.リズ
「あのね、人狼側は、出来るだけグレーゾーンを狭めたくないの。グレーゾーンが狭いと、色々不利になっちゃうからね」
62.ムッティ
「え?ええっと、それはつまり…」
<すぐに理解出来ないムッティ>
63.リズ
「んーっと。例えば、『占われる可能性を高めない為』とか。占い師はこれから、情報ゼロのグレーゾーンのあたし達を占ってくるけど、その候補が少ないと人狼が占われちゃう可能性が高くなるでしょ?」
64.リズ
「だから、既に占われているムッティちゃんを噛んで、出来るだけ占い候補を減らさないようにするんだよ。あとは…それと似た理由で、今日みたいな投票から逃れる為っていうのもあるかも」
65.ムッティ
「今日…投票先をグレーゾーンから選ぶ方法の事?」
66.リズ
「そそ。こっちは投票先を減らさない為だねー。ま、理由は様々だけどさ、奴等にとって『怪しいと思える人物』は多ければ多いほどいいワケ。そいつを狼に見立てて処刑させるって手もあるし」
67.リズ
「だから、こんな事言うとムッティちゃんの不安を煽っちゃうだけなんだけど、奴等にとってムッティちゃんは、立派な噛み先候補にはなっても、スケープゴートにはしにくい存在なんだよ」
68.ムッティ
「そんな…」
<人狼側の理由で噛まれるかもしれな。ムッティの心は恐怖に支配された。回想終了、泣きじゃくるムッティ>
69.ムッティ
「うっ、うう…私が何したっていうの…?あの二人が勝手に占っただけなのに、どうして私が噛まれなきゃいけないのよぉ…!」
<物音>
70.ムッティ
「ヒッ!?………っ、もうやだよ、こんなの……みんな、みんなおかしいよ……」
<死すら恐れず平気な顔で話し合うメンバーへポツリ。ガタガタ震えながら朝を待つムッティ。第一幕、完>