学校、チャイムが鳴る。
帰り支度をする鳴海。


百合01
「鳴海」
(明るく元気な感じはないものの、気さくに。微笑み)

鳴海02
「百合…」
(少し怯えた感じ、百合に話し掛けられた事を嬉しく思っていない)

百合03
「鳴海。一緒に帰ろう」
(微笑み。しかしどこか威圧感あり)


場面変わり、外。踏み切りの音。


百合04
「ねえ鳴海。今日のお昼、どこに行ってたの?せっかく一緒にお弁当を食べようと思っていつもの踊り場で待ってたのに…来なかったよね?」
(責めるような感じではなく、純粋な疑問で)

鳴海05
「きょ、今日は真理子ちゃん…同じクラスの子に誘われたから、その子達と一緒に食堂で食べてたの」
(名前を出すもすぐに同じクラスの子と言いかえて)

百合06
「……食堂で、クラスの子と一緒に?」
(雰囲気ガラリと変わり)


鳴海を体を押す百合。


鳴海07
「いたっ!」

百合08
「何でそんな事してるのよ!鳴海は私の親友でしょ!?親友なら私と一緒にいるべきでしょ!?なのに何で他の子と食べたりなんかするのよ!!」

鳴海09
「ご、ごめんなさいっ、ごめんなさい百合!もうしないから、明日からはちゃんと百合と一緒に食べるから、お願いっ許して…!」

百合10
「っ…!……分かってくれたらそれでいいのよ」
(最初の「っ…!」ではまだ怒りながらもその後の「……」で落ち着き、前のような微笑み浮かべて)


鳴海を抱き締める百合。


百合11
「鳴海。貴方は私の親友、私は鳴海の親友。私達は、見えない絆で繋がっているのよ。…二人の邪魔をする奴は、誰であろうと許さないわ」
(前半は甘く言い、「二人〜」は狂気含んで)


場面変わり、夜。鳴海の部屋。
時計の音。
携帯でメールを打つ鳴海。


鳴海12
「今日は、本当に、ごめん、なさい。……はあ」
(打った文章音読して。最後はため息)

鳴海13
『…私と百合は小学三年生の時に出会った。同じ日に生まれ、同じ時間に生まれた私達。初めてそれを知った時は、不思議な絆を感じて、距離もぐっと縮まったけど…』


百合11の言葉を思い出して。


鳴海14
「…もう疲れたよ…」


場面変わり、百合の家。


百合15
「ただいまー」


帰宅した百合。
自分の部屋に向かう。
百合の部屋。


百合16
「ふふ、ふふふ…あはははは!あーあ、スッキリしたぁ。あの女も、私の鳴海に手を出すからあんな目にあうのよ」


言いながらベッドに座る百合。
鈴の音。


セーラー服の少女17
「満足?」

百合18
「っ誰!?」

セーラー服の少女19
「あんな事をして、満足?」
(一回目の「満足?」とは言い方変えて)

百合20
「な、何よ。あんた、誰よ!?どこから入って来たの!?」
(怯えると言うよりは怒り)

セーラー服の少女21
「誰だっていいじゃない。それより…貴方って酷い事するのね」
(「誰だって〜じゃない」は怒る相手を見て笑いながら)

百合22
「見てたの?」
(少し焦り)

セーラー服の少女23
「ぜーんぶね。…貴方、あの鳴海って子をいい加減解放してあげないと……このままじゃ死ぬよ?」

百合24
「…は…はは、あははは!分かった、あんた鳴海に頼まれたんでしょ?はあ…あの子も馬鹿ね。私はもう怒ってないんだから、こんな試すような事をしなくてもいいのに」
(自分の中で繋がった事に安堵して笑い。「はあ〜」は怒りではなく、仕方ない子ねの意味で。愛しそうに)

百合25
「鳴海に伝えて頂戴。私と貴方には深い絆があるの。誰かと一緒にお弁当を食べたくらいで、嫌いになんかならないって。メールでも謝ってくれたしね」

セーラー服の少女26
「…死の匂いが、濃くなった」

百合27
「はあ?」

セーラー服の少女28
「まずそうな魂だけど、まあいっか…。さよなら、百合チャン」
(「まずそうな〜いっか」は独り言)


ベッドから起き上がる百合。
外は朝。鳥の鳴き声。


百合29
「はあ…はあ…はあ…。夢?」


場面変わり、学校。
チャイムの音、昼休み。


女生徒30
「鳴海ちゃん、今日も一緒に食べようよ」

鳴海31
「あ、ごめんなさい…。今日は、先約があって」

女生徒32
「なんだー、残念。今日は真理子も休みだし…」

鳴海33
「本当にごめんね。誘ってくれてありがとう」


走り去る鳴海。


鳴海34
「はあ、はあ、はあ、はあ」
(走る鳴海、息切れ。少し長めに収録)


待ち合わせ場所の踊り場へ続く階段を駆け上がる鳴海。


鳴海35
「百合!はあっ、はあっ、はあ…。っ、遅くなって、ごめん」
(息をととのえながら)

百合36
「鳴海、走って来てくれたの?」
(嬉しそうに)

鳴海37
「い、一緒に食べるって、約束したから」

百合38
「ふふふ。…そうだ、鳴海。貴方、黒い髪のセーラー服を着た女の子って知ってる?」

鳴海39
「黒い髪の、セーラー服?…思い当たる子はいないけど…どうしたの?」

百合40
「ううん、何でもない。…やっぱり夢だったのね。まったく…嫌な夢。解放しないと死ぬなんて…。あの真理子って女のせいだわ。私から鳴海をとろうとするから、余計な心配をしちゃったのよ」
(「やっぱり〜」は独り言)

鳴海41
「百合?真理子ちゃんが…何?」

百合42
「ああ、鳴海は気にしなくてもいい事よ。言ったでしょ?二人の邪魔をする奴は、誰であろうと許さないって」


女生徒32の言葉を思い出して。


鳴海43
「っ…百合、真理子ちゃんに、何をしたの?」
(ハッとしたように。嫌な予感、震えた声で)

百合44
「何って…。ちょっと脅かしただーけ。鳴海に近寄る足に、少しお仕置きをしたのよ」
(悪気なく罪悪感なく、にこりと笑って)

鳴海45
「そんなっ…!!…そんな、そんな、そんなそんなそんなっ…!」

百合46
「どうしたの、鳴海?」

鳴海47
「どうしてそんな事が出来るの!?真理子ちゃんが何をしたって言うの!?なんで、どうしてっ!」
(取り乱し)

百合48
「鳴海、落ち着いて!あの女は私達の絆を壊そうとしたのよ?あんな女、どうなったっていいじゃない!」

鳴海49
「もう嫌、もう我慢出来ない!……絆って何…?繋がりって何…。そんなもの、私達にはないわよ!」

百合50
「ひ、酷い…私は鳴海の事を思って」


鳴海に近づく百合。


鳴海51
「貴方に縛られるのは、もう沢山なの!」
(百合の言葉を遮って)


百合の体を押す鳴海。
百合の体が後ろに倒れる。


百合52
「鳴海…!」


階段から落ちる百合。
動かなくなる百合。


鳴海53
「ひっ…!…あ…ああ……っ…!」
(最初は驚愕、恐怖。しかし助ける意志はなく)


走り去る鳴海。


百合54
『いたい…いたい…からだが、いたい…』


鈴の音。


セーラー服の少女55
「あーあ。だから言ったのに」

百合56
『どうして…なるみ、なるみぃ…わたしたちには、きずながあったじゃない…』

セーラー服の少女57
「絆、ねぇ。…貴方、絆がどういう意味か分かってる?きずな。ほだすとも言うわね。意味は、他人の自由を束縛して動けなくする事。人と人との繋がりだって言えば聞こえはいいけど、そういう意味もあるって知ってた?」

百合58
『そく、ばく?』

セーラー服の少女59
「そう、束縛。貴方はあの子の自由を縛ってただけ。運命的な絆を感じていたのは、貴方だけだったって事。だから解放してあげなきゃ死ぬって言ったのに…ぶっ飛んだ解釈をされてびっくりしたわよ」

百合60
『…わたし、しぬの?』

セーラー服の少女61
「だから私が此処にいる」

百合62
『…そう…まあ、いっか。なるみにはきらわれちゃったみたいだし…』

百合63
「ふふっ…なるみ…、…むこうで、まってるからね」
(最後の力振り絞り)

セーラー服の少女64
「…さて。早速いただこうかな」


魂抜き出す少女。ドロドロ音。
黒いカラスが飛んでくる。


イチヌキ65
「あまり美味しくなさそうだね、その魂。凄くドロドロしてる」

セーラー服の少女66
「イチヌキ、どこに行ってたの?」

イチヌキ67
「寝床探し。…ねえ、それ食べるの?」

セーラー服の少女68
「うん。イチヌキも食べる?」

イチヌキ69
「いや、遠慮する。僕、美食家だから」


場面変わり、数日後の学校。
チャイム。


鳴海70
『あの日から一週間。百合の死は、不幸な事故という事で片付けられた』


女生徒71
「鳴海ちゃーん、お弁当一緒に食べようよー!」

鳴海72
「うん!」

鳴海73
『ねえ、百合。くだらない絆から解放された私は、今とても幸せだよ』
(笑み。百合を馬鹿にするような感じで)