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 いつまでも変わらない温度で私たちが共存できたならどんなにいいだろうね
やけどのおそれはありません(オズキャシ)
陶器肌の矛盾(気持ち悪いランカ)
晴天のヒースクリフ(美星)
支配者の舌(アル+シェリ+ミハ)
夏眠クラブ(アルシェリ)
エクスタシア(トライアングラーズ)
プラネタリズム(ランカ)









 やけどのおそれはありません
「暑いんだから、引っ付かないでよ」
愛しい妹が連れて来た彼氏があまりにショックだったのか酒に溺れたオズマが、珍しく負けている。まったく、としか言いようがない。図体が大きくて、仕方ないくらい縄張り意識が強いけれど、可愛いのよね。言わないけど。
「あら、また入れ墨増やしたの?」
私の足の上に乗った体を回転させ、見慣れない腕のスカルをなぞる。その行動に何も感じていないこの人は、未だに「ランカ…ランカ…」と歎き続けている。
「スカルなんて。そろそろ年齢を考えなさいよね。相応のものがいいわ」
固くつむった目と固く寄せられた眉に気付かれないように、平たい額に素早く、肉と書いてあげた。









 陶器肌の矛盾
これは、私の目がおかしくなった…わけではないはず。私の目はなんと、あのアルトくんのこめかみからすーっと流れ落ちる水滴がカッターシャツに吸い込まれていくまでをしっかりとらえたのだ!
「わあ…!ほんっと、暑いね!!」
「ああ…設定を間違えたんじゃないかと心配するほどな」
正直私たちの肌はその日その日の気温しか覚えていないのだから、均衡を取るならば毎日毎日同じ気温湿度でいいのではないかと思う。
でも、こんなレアな瞬間を見れるのだから、もう少し暑くなってもいいとも、思っちゃうよね!









 晴天のヒースクリフ
「姫、喜べ!いい収穫があったぞ!」
これが俺にとって本当にいいことだった試しが過去に何回あるというのか。実際は何も言わずにスルーするが、心の中では何月何日何時何分何秒(見知らぬ)地球が何回回ったときだか問い詰めていた。
やたら眩しい空が似合う二人、ルカとランカを両脇に連れてあからさまにご機嫌なミシェルは、ブリキのバケツをどんと俺の目の前に置いた。
「…あ、」
たっぷん、と零れる水に浸かっていたのは黒と緑の縞々模様がトレードマークの瓜科植物の巨大な実だった。つまるところ、夏の風物詩、西瓜である。
「あっ、コレ知ってるわ、スイカね!」
「どーだ、いい収穫だろう?八百屋のレディとちょっとした知り合いでよかったよ」









 支配者の舌
「あ、それマンゴー?」
後ろからにゅっと伸びてきた手は、たちまち手の中にあったものをとりあげる。振り返ると贅沢な笑みを浮かべながらストローを口に含んでちらちらと見てくるシェリルがいた。
「んふふー」
「…百円」
「ん?」
「返せよ」
「はぁ?半分しか入ってないわよ、五十円!」
そして何処から現れたのかミシェルがそれをとりあげ、さらに贅沢な笑みを浮かべながら最後まで飲み干した。
「二十五円、シェリルに払うよ」
「…お前、気持ち悪いよ」









 夏眠クラブ
「起きてるなんて珍しいな」
「…失礼な奴ね」
授業中、眠気を誘う教師の声、黒板にならぶことばの羅列、色素の薄い髪、意志の強い瞳。さっきまで眠っていたはずのシェリルが、机に突っ伏すような形はそのままに顔だけをこちらに向けていた。蜂蜜と苺を煮詰めたら、もしかしてこんな色が出るのだろうか。開け放した窓から風が滑り込んでくるたびに揺れるシェリルの前髪を見つめて、ふと思った。
「今日は腹、鳴らないのな」
「はっ!?嘘っ…」
「嘘」
「ことごとく失礼な奴ね…!」









 エクスタシア
私は放課後がすきだ。それも、下校時刻をとっくに過ぎて夕闇が濃密に迫ってくる、おそいおそい放課後が。放課後は空気が変わる、と私は思う。やわらかくひそやかに、温い空気がゆっくりと冷たいそれに変わっていくことや闇が学校を別世界に塗りかえていくことが、その世界にいっそ取り残されてしまいたいと思わせる。そのままいつまでも他愛ない話をしていたいと思う。目の前のみんなが夕闇を過ぎた青い光に包まれていく瞬間、私たちはどこかとてつもなく大きく深い所で繋がっているような気がする。
「やったあ!あがり!大富豪!」
「…」
「あ、革命なんて、ちょっと、男らしくないわよアルト!」









 プラネタリズム
月が残していった冷ややかな空気は、太陽に温められることを恐れている。月も太陽も疑似ではあるけれど。そんな、カーテンを僅かに膨らませるばかりの冷ややかな風がふく朝。目覚めがいい理由はこのせいだけじゃない。数日前に聞いた話が反復される。
「シェリルさん!花火大会、行きません?」
「いいけど…あ、花火って、打ち上げ?ドーンって?」
「はいっ!浴衣を着て、露店で買ったものを食べたりしながら、花火を見るんです!」
「ロテン…ユカタ!私大好きよ、浴衣!」
そして、リストアップされたノルマを思い出した。金魚すくい、綿菓子、風車、りんごあめ、大本命の打ち上げ花火。
きっとアルトくんも来るだろうな。私は去年まで着ていた浴衣を睨み、馴染みの着付けのおばさんへ電話をした。









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