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 彼のように悔しさを怒りに変えたり、彼女のように悔しさを踏み台にしたり、そんな器用なことができたのなら何等かの決着もつくのだろうけど、生憎今の私はまだまだ幼稚で、少しでも悔しいと思ったら行き場をなくした熱が暴れに暴れて、涙しか出てこない。今まで積み上げてきたことが頭を巡って、余計に惨めになる。

 ずっと一緒にいたって、彼の何かがわかるようになったわけではなかった。寧ろずっと一緒にいたからこそ、彼のことがわからなくなっていった。何をしたいのか、何を成したいのか、何を欲しているのか、何が足りないのか。きっと、以前のほうがいろんなことに気がついた。以前のほうが、彼を理解していた。

 繋ぐ指先のやさしさは確かに存在していたのに、遥かを巡る時間の忘却の中で全てが薄れていくような感覚があった。ずっと覚えていようと決めた体温だとか、ずっと覚えていようと決めた言葉だとか、そんな些細でちっぽけなものさえも私は心の中に留めていられない。覚えていようとすることと忘れないでいようとすることの違いを唐突にたたき付けられて、絶望に涙が溢れた。

 私の心は凍っていたのかもしれない。あなたから離れようとするその波の中に沈んで消えてしまいたい。あなたが揺らんで見えない。ずっと一緒だよって、色褪せることのない約束だと思っていたのにね。





090721



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