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 ランカちゃんの顔を見るだけで、私はランカちゃんが何となく嬉しいのか辛いのか悲しいのか楽しいのか、わかる。
 みんなはどうして気付かないのかしら。彼女は誰より素直に感情を表現するじゃない。嬉しそうに眉を下げて髪を揺らしたり、悔しそうに全身に力をいれてみたり、誰よりもわざとらしくなく感情をぶつけてくるというのに。
 私が言い当てるたびにランカちゃんは「どうして?」と顔を赤らめて目を丸くする。どうしてなのかしら、それは私が尋ねたかった。例えば強がるそぶりだって、私がやるとどうしてか強く突き放しているようにしか取られないけれど、彼女だったら、ああ助けてあげないといけないと手を差し出さずにはいられない。
 少し羨ましいなと思うと同時に、それがランカちゃんの売りでもあるのと諦めたりもする。


「…大丈夫ですか?」
「え、何が?」
「だって、今シェリルさん…」
「やだ、変な顔でもしてた?」
「そんなことは…ない、ですけど」


 シェリルさんの顔を見るだけで、私はシェリルさんが何となく嬉しいのか辛いのか悲しいのか楽しいのか、わかる。
 みんなはどうして気付いてあげないのだろう。シェリルさんは誰より丁寧に感情を表現するのに。悲しいときもそれを察されないように丁寧に表情を作るし、まあ嬉しいときはこれ以上なく満面の笑みを押し出しているけれど、誰よりも他人を優先した感情の出し方を身につけている。
 私がそれとなく言い当てるたびにシェリルさんは黙って片眉をあげる。あまり他人に本当の感情を出したがらないシェリルさんとしては、当然の反応なんだと思う。例えば強がるそぶりだって、私がやるとどうしてもお子様それどころか赤ちゃんのような対応が私を待ち構えているけれど、シェリルさんだと、やれるところまでやらせてあげたいと、周りは黙らずにはいられない。
 カッコイイなと思うと同時に、それはどうしたって私にはできないものだからと憧れを強めたりする。


「何かあったら言ってください!私、力になれると思います!」
「…」
「…多分、」
「ふふ、ありがと」




090602



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