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 アノ子のコト
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「ねえ、つかさちゃん。天音ちゃんって、ナニモノ?」
「…ナニモノ、というと」
 サボり=屋上っていうのは王道だけれど、私の場合は生徒会室だった。広報部の私だけどすんなり入れる。いや、そもそもサボりじゃないし。一応、部活動の一環だし。ここで広報部らしいことをしているかといえば、そうではないけど。だとすればこれはやっぱりサボりか。
「天音ちゃん、自分のことは何も話さないんだもん」
「…香宮はあのKAMIYAっていうのは」
「うん、それは知ってる」
「えーと、…住んでるとこはシティホテルの最上階スイートなんですよ」
「ほお、父親がホテル王なだけありますな」
「中等部ではミスコンで優勝」
「えー、そういうの出るんだ!意外かも!」
「いや、私が無許可でエントリーしました…。あとはー…」
 今更だけど、ここは生徒会"室"っていうより生徒会"塔"っていうほうが正しい気がする。誰の趣味なんだか知らないけど、家具も壁も、学園内で一番凝った装飾がなされている。好きだけど。
「ね、恋愛話とかないの?」
「ん、あー!…一ノ宮って知ってます?」
「一ノ宮?一ノ宮って家具の?同級生?そんな人居たっけ」
「そうそう家具です。でも同い年ではなくて…離れてて。ここの卒業生。68代目の生徒会長で学園祭にもよく来てますよ」
 …ん?以前過去の学園新聞を漁ってたときに見た記憶がある。ちょうどこのとき増築して生徒会"塔"ができたんだ!ということはやはり寛さんがここを飾ったということ…!あとでもう一度探してみよう。
「えー!どこで出会ったんだそりゃ…」
「親が仲良いそうで、今は天音の部屋の隣に住んでるんですよ」
「まじでか!なんかアブナイねえ。ねえカッコイイ?その人カッコイイ?」
「うーん、十人並みってとこですかね…」
「そ、そっかー」
「あと…多分この生徒会室作ったのも一ノ宮さんなんです…」
「え、すごい興味ある!今度さ、天音嬢のとこ遊びにいこ!一ノ宮さん見てみたい!」

「おーい華江、夏服届いたぞ。…って成宮お前また!」
「げ、ばれた!」



 

「これ何だっけか天音」
「ウェイキングライフ」
「…寛はだいたい3回変わってる」
「…天音は2回か」
「賢いな、チンパンジー」
「…しーっ」

「次は?」
「シザーハンズ」
「…あ、いてっ」
「…しーっ」

「天音隊長、もーだめ、瞼がくっつく…」
「まだ寝ちゃ駄目」
「…ムリ」
「次はガタカ」
「…おやすみ…」
「嫌?じゃあビートルジュース」
「…ビザールファンタジーは夢に出てくるから困る…怖い」
「…じゃあ寛は私と映画見れないのね」





「(どよんど)」
「…大丈夫!宮城にもいいところはいーっぱいあるよっ」
「…そう、たとえばどこが」
「えとね………頭っ」
「頭…他には」
「……あ、アタマ?」
「…頭だけか…」
「家柄も!」
「…」
「運動神経もいいでしょ、あとね、作文が上手」
「……はあ」
「あ…、まだあるよっ!ゲームも責任感も強いっ!ヒンコーホーセー!ギリニンジョー!」
「…で?」
「あと…あと、趣味がいいし、片付け上手!聞き上手!歩くウィキペディア!」
「…ふーん」
「えーと…、すごく優しいし、カオも悪くないはず、えーっと、…あれ…」
「…終わり?」
「や、まだあるよ、あのね…」

「…形勢逆転」
「珍しいこともあるもんだな…」
「殿、見つかる、隠れて」





 俺は今、混乱している。犯人は確定しているが、そんなことよりも――
「よりによって濃い色を…!」
 白い上着に青のシャツなんぞ、まるでKABUKI町ではないか!
 コートにマフラーという完全防備であまり披露したくない衣装を隠し、広報部に捕まる前にさっさと校内に侵入し生徒会室に入った。殿や被服部が他のシャツを持っているかもしれないし。
「やあやあ、宮城くん!早いねっ」
 だというのによりによって1番に会ったのは華江だった。確かに想定はしていたが、作戦では最初に会ってはいけない人間が華江でもあった。
「いやん奇遇!あたしもね、見て!題して人魚姫☆みたいなっ」
 いやいや気が早い。あと2時間あるというのに。そういう俺も着込んでいるわけだが、これにはワケがある。「俺の部屋にどうやって入ったんだ」じゃなくて…「他の洋服はどこにやった」じゃなくて…「なぜ青なんだ」はたった今理由がわかったが…。
「これじゃホストだ」
「へ?ホストには宮城みたいな人いないってば」
「…おいそらどういう意味だ」
「お坊ちゃんはホストしないかなって」
「しかし怒るぞ」
「こーゆーのってステレオタイプだね…華江反省」
「…」



 

「ランボー!プライベートベンジャミン!」
「「渋すぎるので成宮つかさアウトー」」
「キューティーブロンド!プリティ・プリンセス!」
「「キュートなので篠宮華江アウトー」」
「ウェイキングライフ、ビートルジュース」
「「ビザールなので香宮天音アウトー」」
「…」
「…」
「…」
「…あ、もしもし稜?あのね」
「…もしもーし、宮城ーっ」
「…ひろし…」

「28日後!28週後!」
「「ゾンビなので舘宮稜アウトー」」
「銀河英雄伝説!銀河鉄道999!」
「「宇宙なので宮城浩一アウトー」」
「ミナ、アメリ」
「「お、オシャレなので一ノ宮寛アウトー」」
「…何見るの」
「そーだねえー」
「いっそ見なくていいんじゃないかなぁ」
「そうね」
「それよりみんなの性格がボロッと出たね…一ノ宮さんが素敵すぎて華江がっかり…」
「華江先輩なら合うかもしれない…私、理解できないって言われた…」
「稜と映画見に行きたくないかも…」
「「「…」」」