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 シェリルさんのライブに行こうとして水浸しになってしまったとき、目の前でお姫様が着替えていた。それが始まりだったね。
 アルトくんはとっても優しかった。歌の意味を知って、幸せを知って、私は恋を知った。誰にも知られてないときの私から今の私までをずっと見ていてくれた。私はアルトくんに感謝して、今も変わらず愛してる。

「悪い、遅くなった」
「全くよ!それでも芸能人?」
「でもほら、今日はプライベートだしっ」

 戦争後、アルトくんは軍人としても家系としても今まで以上にマスコミに注目されるようになった。鳥の人に出演して私とキスしたり、シェリルさんのライブでお姫様抱っこしたり、今や銀河を代表する私達に関わっている人物として有名になっているけど、三角関係と報道されたときはシェリルさんがばっさり切ってしまった。シェリルさんは今後の仕事のためよ、と私に教えてくれたけど、それは本心でないとすぐにわかった。
 きっと、

「アルト何それ!おっかしー!変よ、変!」
「ア、ア、アルトくんっ!」

 きっとだけど、

「ランカァァ!!」
「違っ、違うよぉ!」
「あははは!」

 シェリルさんも私と同じ気持ち。
 私達は、誰かが踏み出せば隣がバランス崩して落ちてしまう、そんな危うい土台に立っている。
 非常に安定した正三角形のそれぞれ頂点に立っている。
 大好きな誰かに落とされるなら、自分で落ちてしまいたい。いつか崩れてしまうのだから、今壊してしまいたい。自分から捨てたんだって。
 でも、

「ランカちゃん、パス!」
「うわぁ、っと!」
「返せ!」

 私は今が楽しくて仕方ない。
 もう少し、もう少しと安定の持続を望み続けてここまで来た。シェリルさんも同じだと思う。でなければこんなに長い時間続かなかった。シェリルさんに落とされるのも、シェリルさんを落とすのも、アルトくんに落とされるのも、覚悟はしていたのに。今になって、怖い。
 私を選んでくれなくちゃ、嫌だよ。
 シェリルさんを選んでくれなくちゃ、嫌だよ。
 確かに辛いけど、三人の仲は崩してしまいたくない。

「シェリル!」

 名前なんていらないよ。アルトくんが呼んでくれないなら。

「ランカちゃん!」

 名前なんていらないよ。アルトくんが呼んでくれないなら。

「アルトくんっ!」

 名前なんていらないよ。アルトくんが答えてくれないなら。




090123
貴方に花を〜…に触発されて



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