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緩く吹く夏の風が不快でたまらなく、わたしはプリズムを浴びることにした。水面が揺れるたびにわたしの体は光りを纏う。
閉鎖的構造の世の中につまらない人間ばかり押し込んだものだから、ヒートアイランド現象が起きちゃって、何百人もの人間がこの世から担ぎ出されている。私たちはちっとも、その変化を感じることがないけれど。
ざばりと飛び出すと紅龍がタオルを差し出してくれた。留美はパラソルの下で鮮やかな青色のトロピカルジュースを飲んでいる。
私が水着で遊んでいる今頃もマイスター達は宇宙だか地上だかで殺戮をしているという。世界のために、私のために。けれど液晶の向こうになれば、残念ながら私には関係のない話だ。
窓の向こうで体積を変えぐらぐらと煮えたように色を変えた太陽が、秒読みで世の色を変えている。
「なんで太陽にはできるのに人間にはできないの?」
「偶像崇拝はおよしなさい」
「あーん間違えた、テロリストとか殺人者って、人間じゃないのよね」
赤雲を借景にして不自然に飛ぶ影を見た。闇に変貌した機体はやはり風変わりな外見をしている。
水面を通した空はぐらぐらと沸騰していた。
「留美ちゃん、次は何をしたらいいと思う」
「退屈ね」
「まったくだよ」
080321