すこしおかしい恋をした。 | ナノ

すこしおかしい恋をした。
芸能人黄瀬×新人編集部員黒子♀


※黄瀬がテツナちゃんをどうしても自分のものにしたいお話
※黄瀬軽くゲスいです
※続編があるかのような終わり方ですが続きは考えてません…











大学四年の春、第一希望だった大手出版社から内定が出て、テツナは念願の雑誌編集部として働くことになった。

それだけで涙が出るほど嬉しかったのだが、欲を言えば様々な書籍の紹介をメインとしている文芸雑誌を作っているチームに配属されたいという希望があった。

が、現実はそううまくいかない。

エントリーシートの時点で希望の配属先は伝えていたが、ほぼ希望通りには決まらないと小耳に挟んでいたのもあり、早々に諦めていはいた。

(…とは言っても……)

まさか、テツナとは全く無縁の芸能情報雑誌に配属されるとは思いもしなかった。
入社して半年ちょっと経つが、好きな芸能人もいないし世間で騒がれている芸能人を見ても何とも思わない。そんな人間が編集部にいてもいいのだろうか、とテツナはたまに不安になる。

この仕事をしていれば数多くの芸能人と関われるし、はっきり言って周りからは羨ましがられる仕事である。
しかし仕事は仕事。いくら興味がないとはいえ今までのように無知なままではいけないと思い、テツナは何でも真面目に勉強し、必死に働いていた。

今日も夜から1ページ分の小さなインタビューの仕事が入っている。お相手は今を輝くさわやかモデルと言われている黄瀬涼太。これまたあまり興味はない存在だが、テツナなりにネットで黄瀬がどういったモデルなのか調べてきた。

(彼氏にしたい芸能人No.1、抱かれたい芸能人No.1、結婚したい芸能人No.1……すごいですね…)

確かに顔は文句なくかっこいいし、身長もかなり高くスタイル抜群。学生時代はバスケをやっていたためスポーツ万能。ファンへもスタッフへも神対応で比較的アンチも少ないという。最近はモデル業だけでなく俳優業やバラエティ番組、CMにも多数起用され、今や芸能界で引っ張りだこの存在だ。

そんなわけで今日は超多忙芸能人が相手のため、黄瀬の撮影の合間に1時間だけ時間をもらうことになっている。

(よし、頑張るぞ…!)

テツナは深呼吸をしてから、約束の場所へと向かった。



***



「失礼致します…」



待ち合わせの場所である、とあるスタジオの一室にノックをして入ると、そこには黄瀬とマネージャーが既に待機していた。

「お待たせしてしまって申し訳ございません。本日はよろしくお願い致します。私誠凛出版の黒子テツナと申します」

テツナは男性のマネージャーと名刺交換を済ませると、黄瀬の方にも深々とお辞儀をした。

「初めまして、誠凛出版の黒子テツナと申します。本日はお忙しいところお時間頂きありがとうございます。約1時間程で終わりますので、よろしくお願い致します」

やっぱりすごい背が大きい、顔の整い方はもちろん、近くにいるだけでいい匂いがするしさすがモデルって感じですね…と、テツナが思いながら顔をあげると、黄瀬がテツナのことを真顔でじーっと見ていた為少し驚いてしまった。が、すぐに黄瀬はにっこりと微笑む。

「こちらこそ、よろしくッス」
「あ…、よろしくお願いします…!」

テツナは反射的にもう一度お辞儀をしてから黄瀬とマネージャーに向き合う形で椅子に座り、インタビューを開始した。



***



「では以上で終わりま…」

全てのインタビューが終わりテツナがそう言いかけた瞬間、黄瀬のマネージャーの携帯が鳴り響く。

「失礼、ちょっと出てきます」
「あ、はい」

マネージャーがそう言って足早に部屋を出て行く。自然とこの部屋には黄瀬とテツナの2人きりの状態になった。

(………な…何か喋らなきゃ…)

テツナは咄嗟にそう思ったが、焦りもあって特に良い話題が浮かばない。売れっ子芸能人に対してかける話題がないなんて、とテツナは回らない頭を使うがいいネタは何も出てきやしない。

「ねえ」

先に口を開いたのは、黄瀬の方だった。

「!は、はい」
「…そんな普通のインタビューでいいんスか?」
「……えっ?」

ソファの背もたれに体を預けていた黄瀬が上体を起こし、テツナの手に小さな紙を握らせた。

「今日の23時に、ここに書いてあるお店に来てくれたらもっと色んな話してあげる。あんなテンプレみたいなインタビューじゃなくて」
「…………はい?」
「今まで何度も色んな雑誌でインタビューとか受けてきたけどさ、どこも大して変わらないじゃん。もっと面白い記事書いたら雑誌も売れるし黒子さんも上から評価されるんじゃない?」
「………」

(他の雑誌よりも、もっと面白い記事……………)

ただでさえ今は何でもかんでも電子化されてしまい、出版業界の闘いはなかなか厳しいもの。他の出版会社とは常に火花が散っているのはテツナもよくわかっている。少しでも注目される記事を書けば、もちろんその雑誌がよく売れる…。

「…で、でもそんなこと…」
「そんな深く考えないで、仕事の延長だと思って…ね?」

戸惑うテツナを黄瀬はじーっと見つめてくる。そんな整った顔で見つめられたら、断ることなんてできない。

(……仕事の延長、)

面白い記事を書けるような話題を提供してくれるなら、これも仕事の一貫になるだろうか……。テツナが口を開いた瞬間、先程部屋を後にした黄瀬のマネージャーが戻ってきたため身体が強張った。

「すみません、席を外してしまって」
「あ…いえ!もうこれで終わりなので…」
「そうですか。では本日はありがとうございました」
「こちらこそ、お忙しい中お時間頂きありがとうございました」

テツナは深くお辞儀をし、ゆっくり顔をあげるとマネージャーに続いて部屋を出て行こうと黄瀬がこちらを振り返ったため、ドキリとした。

(あ と で ね)

口パクでそう言い、ニコッと笑ってから部屋を出て行った。恋愛ドラマによくありそうなシチュエーション。大抵の女性ならキュンとくるはずなのだが、テツナはまるでホストだ…とある意味感心した。

黄瀬に握らされた小さな紙を、テツナは着ているスーツのポケットにしまった。

(……黄瀬くんには申し訳ないですが、ネタになりそうな話だけ聞けたらすぐ帰ります)

編集者としてかなりずるいやり方に参加しようとしているという罪悪感はもちろんある。が、こんなおいしい話あるものか。今のテツナはとにかく良い記事を書きたいという考えばかりが先走っていた。

黄瀬の本当の顔なんて、知りもしなかった。



***



「…ここですね……」

約束の23時、テツナはスーツ姿のまま紙に書かれていた店の前までやってきた。外から見ただけでは中の様子が見えない、明らかに高級そうなバーである。
こんなところ来たことがない。テツナは少しドキドキしながらも店のドアを開けると、入ってすぐに受付らしきカウンターがあり、スーツを着た上品そうな男性店員が微笑みながらいらっしゃいませと一声。

「…えっと、」
「お待ち合わせですね」
「……は、はい」
「ご案内致します。こちらへどうぞ」

何故わかるんだ、と思いながらテツナが店員の後をついていくとバーカウンターの端に座る、黒縁の伊達眼鏡をかけた黄瀬の元へ案内された。黄瀬はテツナに気付くとパアアッとあからさまに嬉しそうな表情になる。

「本当に来てくれたんスね」
「……まあ」
「めっちゃ嬉しい。何か飲む?お腹すいた?」
「ソフトドリンクでいいです…」

勘違いするな、僕は仕事で来たんだ。今を輝く黄瀬涼太の素顔を知るために。他の雑誌よりもっともっと良い記事を書くために。…だから、そんなキラキラした眼差しで見ないでほしい。罪悪感が膨らむ一方だ。

「へへ、俺黒子っちともっと話してみたくて」
「…くろこっち?」
「そう呼んでもいい?」
「…はあ……」
「さっき初めて黒子っちを見た時に、めっちゃヤり…えーと何かすごい気になって」
「?それはどうも」
「…まあ、さっきみたいなお固い雰囲気じゃなくてさ、色々話そ?ね?」

なんだか、先程のインタビューの時のような雰囲気とは少し違う。仕事モードからオフモードに変わった感じだ。


「俺、こうやってゆっくり話できる人欲しかったんだ〜…」
「?黄瀬くんならそんな人たくさんいるでしょう。顔広そうですし」
「いや意外にそうでもないんスよー、みんな上辺だけなのがわかるしこの業界だと友達付き合いさえも地位や顔で選んでるんだなっていうか……」

そう言って少し寂しそうな表情を見せた黄瀬が、テツナには子犬に見えてしまった。こんなでかい身体をしているというのに。

(……人気芸能人も、色々大変なんですね…)

テツナは黄瀬から溢れる子犬オーラに押され、何だか一気に黄瀬が可哀想に思えてしまった。
テレビや雑誌で見るだけだとザ・完璧モデルという感じだが、本当は孤独を感じていただなんて…。

「…わかりました!黄瀬くん、今日はじゃんじゃん飲んで嫌なことは忘れましょう!」
「…本当?」
「はい!…僕で、良ければですけど…」

黄瀬は少し驚いた表情だったが、すぐに満面の笑みになる。

「…ありがとッス!じゃあ黒子っちも何かお酒飲も?ここ美味しいのたくさんあるから」
「…そうですね、少しだけなら…………明日は土曜日ですし………」
「うん、飲もう飲もう」

テツナは当の目的を既に半分忘れて、しおらしい態度をとる黄瀬に同情しあっさり飲みに付き合うことになってしまった。


黄瀬の、全く笑っていない目には気付かずに。



***



「っは……!?」

まるで何かを思い出したようにパッと目を開けると、テツナの視界には見慣れぬ天井。

(…えっ…どこ、ここ…)

というか、僕は何をしてたんだっけ?昨日……昨日は、夜にあの黄瀬くんのインタビューをやって、その後は…そうだ、黄瀬くんに誘われて高級そうなバーに……その後は……その後は…?

「おはよ黒子っち」

真横から聞こえる低音ボイスに背筋が凍る。テツナが恐る恐る声の主を見ると、そこにはそれはもう嬉しそうに自分を見つめている上半身裸の黄瀬がいた。

「っ…!?な、な、」
「うわあ、黒子っち寝癖すっご」

アハハと呑気に笑いながらテツナの寝癖頭を撫でる黄瀬。テツナはまさかと思いかけていたシーツをめくると、自身の裸が目に飛び込んできたためサアーッと青ざめた。

「あ……あの、これは、どう、いう、」
「まあ覚えてないッスよねえ〜、あれだけ飲んだら」
「あれだけ…って…」
「もう黒子っちべろんべろんで1人じゃ歩けないレベルだったもんね。このホテルに連れて来るの大変だったんスよ〜って言っても黒子っち軽かったから楽勝だったけど。あーんな甘ったれた声出しちゃって…思ったよりガードゆるいんスね。まさか他の男にもこんなことしてたりしないッスよね?」

そう言いながらテツナの頬を愛しそうに撫でる黄瀬。
…何故まるで自分の彼女にするようなことをしているんだ、この人は。

「な……何なんですか、さっきから……何言って……」
「黒子っち可愛かったなあ、もっと奥突いてとかもっとちゅーしたいとか言って……ほら、写真も動画も撮ったんスよ」
「……は?」

黄瀬は枕元に置いてあった自身のスマートフォンを操作してテツナに差し出した。そこには、あられもない姿をした自分の写真が何十枚もズラリと並んでいる。

「っ…!?」
「よかったね、黒子っち。これで他の雑誌に負けない記事書けるね。キセリョと一晩過ごしました〜って」

こんな出来事記事として書けるわけがない。分かり切っていることなのに、からかうようにそう言ってくる黄瀬にテツナはカッとなった。

「ふざけないでください…!酷いです、こんなの…!騙したんですか!?」
「あんたが俺の情報欲しさにのこのこ来たんじゃん。人聞きの悪いこと言わないでほしいッス」
「…っそれ、消してください!」

テツナが黄瀬のスマートフォンを奪おうとするも、黄瀬はベッドの横にあるソファにスマートフォンを放り投げてテツナをいとも簡単に押し倒した。

「っや!はなして…っ」
「…………ねえ、大手出版社に勤務してる新人編集部員の女性が、俺と酒に酔った勢いでヤッちゃいましたなんて世間にバレたら………やっばいよね?これ。黒子っち、クビッスね」
「……っ…………」
「バレたくないでしょ?黒子っち真面目ちゃんだもんね?まだまだ今の会社で働きたいんだもんね?」
「……何が、目的なんですか……」

この鬼、悪魔、最低男。
テツナは内心はらわたが煮え繰り返っていたが、何とかして平生を保つ。今、目の前の男は自分の裸の写真と動画を持っているのだ。下手に刺激を与えることはできない。

黄瀬はうっとりした表情で、テツナの唇を親指でなぞる。


「…俺と付き合えば、この写真も動画も消してあげる………。ね、めっちゃ簡単でしょ?」


テツナは目眩がした。



(……何が、今を輝くキセリョ、だ……)


欲しいと思ったものは、必ず手に入れる。
それがどんなに汚い手でも、必ず。


それが、黄瀬涼太の素顔。








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犯罪(ω・`))(´・ω・`)(( ´・ω)
けど、テツナちゃんをどうしても自分のものにしたくてでもどうすればいいか分からなくて捻くれた考え方でここまでやっちゃうちょっとおかしい黄瀬が好き!最後はハッピーエンド推奨です……嫌々付き合ってるうちにテツナちゃんも何だかんだ黄瀬に惹かれてく感じかね…イイネ!!








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