愛してるから、君も愛して
黄→黒♀→青
※ツイッターでぼやいていた少女漫画ネタ
※を、書いたけどオチがなさすぎるのでぷらいべったーに載せたものです
※続編があるかのような終わり方ですが続きは考えてません…
※青峰でてきません
『中学生の恋愛なんて、恋愛なんて言えないよね』
高校に入ってから、そんなセリフを幾度となく聞いた。大したこともできないし、所詮子供のお遊びだと。年齢的にも、今思うと本気じゃないと。恋に恋してただけで、心の底からその相手が好きだったわけじゃないと。
(…僕は違う)
僕は、
今でも青峰くんが好きだ。
***
「黒子さん、今日ヒマ?」
帰りのHRが終わって帰ろうとテツナが席を立った瞬間、普段全く話さないクラスメイトの女子2人がテツナに近寄ってきた。
「…えっと……何でですか」
「……あのね、黒子さんはもしかしたらこういうの苦手かもしれないけど…………」
「これから他校の男子と合コンなんだけど…よかったら来てもらえないかな?」
「どうしても人数足りなくて…」
合コン。
自分には無縁だと思っていた単語だ。
「…すみません、僕そういうのは……」
「お願い!黒子さんは座ってるだけでいいからさ!」
「お金もうちらが出すから!」
「多分そんな長引いたりしないし……お願いします!!」
「………………」
自分とは正反対で、きっと今日のために可愛らしくお化粧をして、オシャレをしている3人を前にテツナは困惑した。頼まれるとどうしても断れない。それがか弱い女の子であると、尚更。
(……そういう僕も一応女ですが…)
テツナは小さく息を漏らしてから、少しだけなら…と呟いた。
「ありがとう!!めっちゃ助かる!」
「4対4なんだけどね、みんなめっちゃかっこいいしノリいいから!大丈夫!」
「うん!行こ行こ!」
「はあ…………」
何が大丈夫なんだ、とテツナは思いながらもきゃっきゃと楽しそうな3人の後にのろのろと続く。
「…………ねえ、本当に黒子さんなんて呼んで大丈夫だったの?」
「だーって、1人くらいこういう地味な子がいないと。引き立て役だよ、引き立て役」
「そうそう。絶対今日来る男の子たちは誰も黒子さんみたいな子好まないもんね」
「あーなるほどね。あんたやるじゃん」
「でしょー?」
そんな3人のヒソヒソ話は、後ろを歩くテツナの耳には入らなかった。
***
「…今日って本当に黄瀬くん来るのかな?」
「来るって言ってたし平気だよ、黄瀬くん来ないともはや意味ないし」
「ほんとほんと、黄瀬くんに会うために今日の合コンやるようなもんだから!」
待ち合わせである駅前で、他校の男子とやらを待つ。
テツナは3人と一緒にいながらもぼんやりとしていたが、彼女達の口からやけに『キセクン』という名前が飛び交うため、今日の主役は『キセクン』で、みんなその人に会いたいがために気合が入ってるんだなあと感じ取った。
「!やばい、来たよ!!」
「えっ超やば、えーっ!めっちゃかっこい…!」
「本物の黄瀬くんだ…!!ちょっと待って心の準備が…!」
途端に小声で慌ただしくなった3人が見ている方にテツナも目をやると、1人やたら長身の男子グループがこちらにやってきた。
(…あれがキセクン、ですか)
確かにかなりのイケメン。背も大きく、体もがっしりしていて今時の女子が好きそうな男子という感じだ。
「ごめんお待たせー!」
男子の1人が明るくそう言って他の3人とも目の前まで来たが、肝心の黄瀬だけが表情1つ変えず会釈をしただけであまり愛想がない。が、そんなのは女子3人にとっては関係ないらしく目がハート状態である。
(………帰りたい)
イケメンの黄瀬くんとやらもテツナにとってはどうだっていい。とにかく、まだ始まってもいない合コンから逃れたくて仕方がなかった。
しかしこんな早く帰るわけにも行かないため、ちょっと滞在したら先に帰ろう…と、テツナはカラオケへと歩き出した皆にすごすごついて行った。
ある1人からの視線には、気付かないまま。
***
何が、そんなに長引いたりしない、だ。
カラオケのこの盛り上がりようからして長引かないわけがない。テツナは端っこに座ってただひたすらココアを啜っていた。
(……例のイケメンくんは、人見知りなんでしょうか)
皆が歌って騒いで盛り上がってるというのに、明らかに女子3人が黄瀬をチラチラと見て絡みたがっているというのに、本人はぼーっと皆の歌を聴いてるかスマホをいじるかしかしない。
(……まあ僕が文句言える立場じゃありませんが…)
かっこいいのに勿体無いことをするんだなあ、とテツナは思いながらも、とりあえずどのタイミングで帰ろうかということしか頭になかった。
(………とりあえず、トイレにでも行こう)
自分は何もしてないのにどっと疲れてしまった。
テツナは皆に何も告げず、そっとカラオケの部屋を出た。
***
「……はあ」
部屋に戻りたくない。もうずっとトイレにいたい。
……お腹壊したとでも言ってそそくさと帰ろうか。人数合わせとは言っていたが自分がいなくなった所で困る人間もいないだろう。よしそうしよう。
テツナはそう決意して女子トイレを出た、が。
トイレの目の前には、黄瀬が壁に寄りかかって立っていた。
「っ!」
予想外の状況にテツナはビクリと身体を揺らして部屋に向かおうとしていた足を止めた。しかも、舐めるようにじっとテツナを上から下まで見てきてスルーできる雰囲気でもない。
改めて近くにいると、背は大きいし顔が整いすぎて直視するのもちょっと嫌になる。一体この人はこんなとこで何をしているんだ。
何で、自分なんかを凝視しているんだ。
「……と……トイレ…ですか……?」
テツナの口からやっと出てきたセリフはそれだけだった。それしか思いつかなかったし、どうにもならなかった。
すると黄瀬は、にっこり笑ったかと思うとテツナの細腕を掴んで自分が寄りかかっていた壁にテツナを押さえつけた。所謂壁ドン状態である。
咄嗟のことすぎてテツナは抵抗するどころではない。すぐ目の前には、女子3人が騒いでいたイケメン『黄瀬くん』が自分の顔を覗き込んでいる。
「やっぱり、かわいい……」
「は?」
ぼそり、と黄瀬が言ったセリフにテツナは耳を疑った。
「今日待ち合わせの時に見た瞬間からめちゃくちゃかわいいって思ってたんスよ………、ね、俺とこれから抜け出そ?」
「え?何……………は???」
テツナは他人からかわいいと言われた記憶もほぼない上に、こんな今時なイケメンにそんなことを言われても全くもって信じられなかった。
「…あの、からかってるならやめてください………」
「からかってなんかないッス。本気」
「………罰ゲームとかですか」
「だから違うって。そんな子供じみたことやんねーし。…ね、俺がカバン取ってきてあげるから」
「や………、嫌です、僕帰ります」
「じゃあ俺も帰る」
「…っやめてください、本当に……っからかうのは……」
「だーかーら、からかってなんかねえっつーの。…そんなに疑うなら試してみよっか?」
「……え、」
「からかってる相手に、こんなことしないから」
ぐ、と大きな手で顎を掴まれ上を向かされる。
(……キス、される……っ!)
そう思った瞬間テツナは無意識に、
「僕っ!!好きな人いるんです…………!!!!」
と叫んだ。
途端にピタリと黄瀬の動きが止まったため、その隙を狙ってテツナは黄瀬からバッと離れた。
「……だ、だから………他当たってください!!」
テツナはそんな捨て台詞を残して、走って行ってしまった。
取り残された黄瀬は、冷めた表情でテツナの小さな背中を見つめる。
「……好きな人、ね……………………」
今まで黄瀬の好みは、どちらかというとギャルっぽくて派手なタイプだとぼんやり思っていた。というか、自分の好みがどんな人なのかわからなかったのだ。
友人に無理矢理連れられて来た、今日の合コン。そこには香水臭くて濃いメイクをした3人の女とは正反対の、今にも消えてしまいそうな淡い雰囲気を持つ少女がいた。
この子を自分のものにしたい。
テツナを見て、ただただそう思った。真っ白な肌、小さな身体、華奢で今にも折れてしまいそうな手脚、肩まで切りそろえられたボブヘア、薄い唇、大きな目、クールな表情、何もかもが黄瀬の目を惹いた。
この子は、何としてでも自分のものにする。
彼氏がいようが好きな人がいようが関係ない。逃がしてなんかやらない。諦めてなんかやらない。何が何でも自分のものにする。
「……絶対、俺のことが好きになるようにしてやる…」
どんな卑怯な手を、使ってでも。
***
(……もう、やだ……………っ………、)
最悪だ。もう帰ろう、だから来たくなかったんだ、こういうところには。
(………あの人…、ほんと頭おかしいんじゃないですか………)
どう考えてもからかわれている。あんな人が、僕のことを本気でかわいいなんて思うはずがない。
「……っふ…ぇ……、…」
ぼろぼろと涙が零れる。
『テツ』
こんな時に思い出すのは、やっぱりあの人だった。
「……っ……青峰くん……っ…………」
…僕は、君じゃないと、
君じゃないと、だめなんです。
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青峰はテツナちゃんが中学の時に好きだったというか、両想いだったけど付き合うまでいかなかった感じ…
この後黄瀬の猛アタックが始まるんですが青峰一筋のテツナちゃんには全く効かずそれどころか青峰と再会してしまい、それにイラついた黄瀬が次々とゲスいやり方でテツナちゃんをものにしようとするみたいな続き誰かお願いします