甘え下手彼女 | ナノ

甘え下手彼女
青黒♀/社会人パロ/生理ネタ有




恋人に甘えてほしいと思ったのはテツが初めてだった。
基本淡白すぎるせいで、テツからイチャイチャもしたがらなければキスやセックスを要求してくることもない。2人の時は全部俺からベタベタくっついている。
テツと付き合うまでは恋人に甘えられたいだとかイチャイチャしたいだとか、そんなの逆に面倒かつうっとおしいと思っていたのに。
2人きりの時ならずっとくっついてたいと思うし、何だかんだテツも嫌がったりしないからまんざらでもないのだろうと思う。
でも最近は何だかテツから甘えられたいという欲がムクムクとわいてきた。無表情が基本装備のテツが、俺だけに見せる面とか、そういうのがほしい。
とは言ってもテツにもあの無表情の中に一応喜怒哀楽が含まれていて、楽しそうにしてるなとか今機嫌悪いなとか、まあ他人からしたら全くわからないような、そういうのが自分には分かるのは自慢だ。
でもこう、その、テツ自身から意思表示をしてほしい………… と思っていた。ら。









昨夜、仕事帰りにそのままテツの家に泊まり、明日は土曜日だし久々にのんびりドライブにでも行くかという話を2人でしながら、テツのベッドでくっつきながら寝た。
お互い仕事で疲れ果ててでまあまあ早く寝たため、俺は3時頃に目が覚めた。ぼーっとした頭でもう一度寝るかと考えていると、隣にテツがいないことに気付く。一瞬驚いたが向こうで物音がしているのが聞こえたため、何だトイレかと思いもう一度目を閉じた途端、小さい嗚咽と苦しそうに咳き込むのが耳に入りがばりと飛び起きた。
トイレの方に目をやるとドアは開けっ放しで、トイレの電気の光が漏れていた。

「テツ!?」

急いでトイレに向かうと、そこには便器の前にぺたりと座り込んでぐったりしているテツの後ろ姿があった。

「おい、どうした!?気持ち悪ィのか?」

慌てふためきながらテツの小さな肩を抱いて顔を覗き込むと、涙でぐっしょり濡れているテツの顔に心底驚いた。
泣くほどどこか痛いのか。サッと青ざめた俺は救急車…!!!と叫んでスマフォを取りに行こうとした。が、その時テツが弱々しく何か呟いた。

「あ!?何!?もっかい!」
「…せい、り…きた、」
「…せいり……月1でくるやつか?」

ハラハラしながらそう言うとテツはこくりと頷く。
ああ、変な病気じゃなかったのか良かった…と胸を撫で下ろしたが、生理ってこんな風になんのかよ。テツの生理痛が重いというのは聞いてはいたが目の当たりにしたのは初めてで、しかもここまでつらそうだとは思わなかった。

「どこが痛ぇの?」
「…おなかの下のほう、…あと、きもちわるい」

あまりにも苦しそうに、力無い声で言うので不安が倍増する。喋るのも億劫なようだ。
便器の中には吐いた形跡があり、毎月毎月テツが1人でこんなつらい思いしてたのかと思うと自分の不甲斐なさに情けなくなる。とは言っても、俺が痛みをなくしてやることなんて出来ないんだろうが。
無知すぎてどうしてやればいいのか分からないが、テツが少しでも楽になることがあれば何でもしよう、そう決めると涙で濡れているテツの頬を優しく拭った。

「まだ吐きそうか?どうしたい?」

テツはふるふると首を横に振るとベッド、と呟いた。
ベッドな、とテツを横抱きにして立ち上がると、テツが甘えるように胸元に頬を擦り寄せてきた。…何コレかわいい。

ゆっくりテツの身体をベッドにおろすと、テツはベッドに座り込んだまま腹を抑えていた。

「横にならなくていいのか?」
「……寝転がると、もっといたい」
「そうか…薬とかは?」
「…そこの、ひきだしに、」

テツに言われた通りの引き出しから鎮痛剤を出して冷蔵庫からミラルウォーターを出して持ってきたが、テツは何故か飲もうとしない。

「飲まねえの?」
「………………」
「テーツ?」
「…て、」
「え??」
「……のま、せて」

俺は自分の耳を疑った。
のませてって。テツが。あのテツが。え。薬飲ませてってこと?だよな……??
テツらしからぬ発言に固まっているとテツがはやく、と俺が着ているTシャツをくいくいと掴んできた。何コレかわいい。本日2回目。

俺はとりあえず自分もベッドに上がって、テツを横抱きの体勢に抱えてから小さな錠剤をテツの口元に運んだ。

「テツ、くち開けて」

僅かに開いたテツの口に薬を入れて、念のためミネラルウォーターをテツに差し出したが持とうともしない。全てに無気力なようだ。
じゃあ口移しだなと言うとテツがちょっと嫌そうにした。飲ませてって言ったのはテツなのに口移しは嫌だとか矛盾しているが、そのよく分からないわがままさえも可愛いと思ってしまう俺は末期だ。
つっても自分じゃ飲もうとしねえし、と俺は結局自分の口に水を含んでテツの後頭部に手を添えると強引に唇を重ねた。

「っん、ぅ…っ」

テツの口からだらだらと飲みきれなかった水が流れる。ごくり、と薬を飲み込んだのを確認してから唇を解放してやった。その時にちゅぱ、という恥ずかしい音がしたせいかテツは顔を赤くして俯いてしまった。…生理じゃなかったら今すぐ押し倒してるぞ、これ。

テツの首元まで垂れてしまった水をタオルで拭いてやっていると、テツが自分の腹を抑えながら痛い、と再びぽろぽろと泣き出した。
そんなテツが凄く幼く見えて、よしよしと頭を撫でてやると縋るようにテツの細い腕が俺の首に巻き付く。俺の肩に顔を埋めてひくひくと泣きながら、時折舌ったらずな声であおみねくん、なんて言うものだから何かもうやばかった。
…不謹慎なのはわかっている。が、可愛い。いつもの敬語も取れて、子供のように自分に甘えてくるテツが、可愛くてたまらない。

「腹痛いなら、さすっててやろうか?」
「……ぅ、ん…」
「だんだん薬効いてくるだろ。それまでさすっててやるから」

テツが俺の肩から顔を離す。涙がたまっている目元を、大丈夫だと言いながら拭ってやった。

「……あおみねくん、」
「ん?」
「ちゅー…して…」





あ、勃ったわ、と最低なことを思いながら平生を装ってテツの薄い唇に自分のを重ねた。
自分の理性を取り戻そうと早めに唇を離すと「やだ、青峰くん、もっと」と熱っぽい声で言われたので何かもう俺は死んだ。
どうすべきかと硬直していたら、テツが自分の唇をぐっと押し付けてきた。しかも必死に舌を割り込もうとしてくる仕草にブチッと何かが切れ、俺はテツの小さい口に舌を入れて今だけめちゃくちゃにキスをすることにした。

「っんぅ、ふ、ぁ……、」
「…っは、テツお前、煽ってんじゃねえよ……犯すぞ」
「…ふ、ぅ、…ばか……へんたい、」

ばかとかへんたいとか、言い方がいちいちエロ可愛い。俺に悪態をつくのも何もかもが愛おしかった。
何度も角度を変えて貪り、最後は名残惜しそうに唇を舐めてから離すと、テツは朦朧としながらも満足そうに小さく微笑んだ。
…そういうのやめろ、くそ可愛い。

そしてテツがこてんと俺の胸板に頭を預けてきたので、先程言ったようにテツの腹をゆっくりさすり始める。

「…青峰くんの手、おっきくてあったかい……」
「…そらーよかった」

しばらくさすっててやるとテツがだんだんウトウトし始めたので、寝ろと言わんばかりにテツの頭を撫でる。
徐々に規則的な寝息が聞こえてきたので顔を覗き込むと、最初の苦しそうな表情はすっかり消えて気持ち良さそうに目を閉じていた。
俺はホッと安堵のため息をつく。

「…ったく、普段もこのくらい甘えてくればいーんだよ、お前は」

いつもいつも何かと1人で抱え込みやがって。
もっと頼ってくれていいし、もっと尽くしてやりたいのに。

(……まあ、こんな弱ったテツは俺だけが知ってればいいんだけど)



…とりあえず今は、息子が元気に勃ちあがったままというつらい現実に向き合うことにした。















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