二ノ刻1 | ナノ

二ノ刻
〜双子巫女〜



『せっかく会えたのにどうして殺した』

息苦しくなるほどの重々しい台詞と、吐き気を催すほど鮮明な絞殺シーン。恋人である真澄さんの霊に首を絞められ、徐々に意識を失う美也子さんの表情の変化までしっかり認識できてしまう、悪質なまでにグロテスクな映像。
恋人失踪の真実を知るため訪れたこの村で闇に取り込まれ、最終的にはこの世のものではなくなってしまった恋人の手で殺められた女性に、同情をするということは軽すぎる行為であろうか。

美也子は消えた。きっと、成仏した。そのはずだ。そうであってほしい。恋人と一緒に、そちらで幸せになるべきだ。

射影機を構えた澪の手がいやに震えた。そして抵抗する間もなく全身から力が抜け、目の前が真っ暗になった。そのまま床に崩れ落ちた感覚はあったが、痛みは一切感じず、無抵抗のまま闇の奥に引っ張り込まれた感覚であった。

***

気絶していたらしい。冷たくほこりっぽい木の床に伏していた重い体を起こす。そういえば、夢を見た。真っ暗な、平面的な闇の中、姉が必死に紅い蝶を追いかける夢。徐々にクリアになってきた頭で夢の回想をしていてやっと、異変に気がついた。あわてて立ち上がり、あたりを見回す。いないのだ。さっきまで自分の隣にいた繭の姿がどこにも見当たらなかった。

二階の部屋は一通り探した。でも足取りは掴めず、焦りばかりが先を行き、体を追い越してしまう。一階へ降りてみようと廊下に出た瞬間、どこかで物音がした。びくんと心臓が飛び跳ねる。手摺りから身を乗り出して音の出所を探すと、一階の玄関に繭の姿をみつけた。さっきまで閉まっていた玄関が開放されており、繭は今にも外に出ようと扉に手をかけているさなかであった。

「おねえちゃん?」

二階から叫ぶと、繭もこちらに気付いて顔を上げた。やけに無表情のまま澪を見据え、どことなくうつろな瞳で、ごめん…と顔を伏せる。それから早口に

「わたし、やっぱり行かなきゃ」

澪の返事も待たずに、繭は早急に家の外へと飛び出した。あっ、と息を漏らしたまま、繭のあまりにも不可解な言動に対し、澪はしばらく口が利けないでいた。


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